一部の例外的事象を誇張する。

 古典的で王道のプロパガンダ手法である。
 80年代以降、国民の反社会福祉感情を煽るため、新自由主義者や影響を受けた若手エリート官僚により、社会保障の不正受給などの事例を意図的に繰り返し公表され、また影響を受けたメディア関係者によりさらに拡大報道され、国民の反社会福祉感情醸成に貢献した。
 本来社会保障の不正受給の問題と社会保障の必要性は別問題なのだが、受け手は社会保障に対するイメージを低下させ、極端な不要論に傾斜させることさえ可能だ。
 もちろん、極端に不正が横行すると、あらゆる制度は信用を失い崩壊するが、実際にごく少数の事例を繰り返し報道することにより、意図的に「横行」している印象操作を与え、制度を恣意的に崩壊させることができる。

 どうも保守主義を標榜する方々は55年体制の頭から開放されていないようで、弱者に厳しいことをあいかわらず是しているようで、世間が新自由主義に懐疑的になった今なお、アンチ社会福祉プロパガンダに余念がないようだ。
 東京都の年越し派遣村の問題は、面従腹背で官設派遣村を設置した石原慎太郎率いる東京都と産経新聞が祭りのようなプロパガンダを繰り返している。石原慎太郎産経新聞55年体制脳の保守から脱却できずにいるようで、皮肉なことにこのプロパガンダ保守主義の喧伝にはマイナスである。

一部の例外的事象を誇張するプロパガンダは様々な場面で利用される。最近の民族紛争では、一部の人間の過激な行動を誇張し、特定の民族や集団のすべてが悪であるかのようなプロパンダを行い、民族憎悪を喚起して紛争を泥沼化させることが多い。
もっとセコイ話で言えば「荒れる成人式報道」もそうだ。ある一部の地域の成人式で新成人が暴れたことが報道されることによって、受けてはまるで全国各地の成人式が荒れまくっているかの印象操作を受け、ひいては最近の若者は駄目だと言う結論に至る。もっともこれは政治的意図というより、マスコミの自己満足という感じがするが。