検察捨て身の技で勝利。小沢一郎は相当のダメージを受けたが絶対に辞めないだろう。そもそも小沢辞めろ世論調査はナンセンス。
小沢一郎辞めろアンケートは意味がない。
マスコミは小沢一郎は不起訴になったが、世論調査の結果に基き「世論は許していない」的な報道をしている。別に小沢一郎を擁護する訳ではないが、ロジックとしてナンセンスである。
そもそも小沢一郎は典型的な不人気政治家であり、彼が日本の権力の中枢にいること自体面白くない人がたくさんいる。今回の多くの世論調査は、悪いことをしたから辞めて欲しいのか、元々嫌いだから辞めて欲しいのか、それとも民主党関係者の中で民主党が選挙で不利になるから辞めて欲しいのか、どんな意図で止めて欲しいのかよくわからない世論をただ足しただけの調査結果では何も見えてこない。
私は相当数、小沢一郎が嫌いだから辞めて欲しいという民意だと理解している。小沢嫌いもいろいろな類型があって
- 都市改革派:古臭いドブ板選挙。都市部の利益を地方に配分する政治を止めて欲しい。首領政治が嫌い。ネット選挙で政策中心のスマートな政治をして欲しい。古臭い政治家は早く止めて欲しい。
- 民主リベラル派:強い権力や傲慢で自己主張の強い政治家が嫌い。反金権政治。自分の信念より庶民の声を大事にした政治をして欲しいと考えている。
- ネットウヨク:外国人参政権問題を主導しているのは小沢一郎で、彼がいなくなればこの問題は終わる。
という具合に。まあ今回の政治資金問題は都市改革派や民主リベラル派が嫌う問題が露呈したことで嫌悪感を上塗りする結果となったので、事件と辞任すべきか否かは関連しているとも言える。
小沢一郎は売国奴だから逮捕しろとか言っているネットウヨクの意見はここでは無視する。
捨て身の技で勝利を手にした検察
ネットでは検察の敗北、小沢一郎の勝利という言説もかなり多く散見されるが、アルファブロガーなど「政治に関心のある人たち」に偏在する意見だと考えてよい。一般ピープルは警察同様、検察の無謬性を信じており、逮捕されなくたって検察沙汰になるだけで「悪いことをしたに決まっている」と思っている。
検察は参考人招致しただけでも、小沢一郎に強いダメージを与えることができるのである。日本の国民が余りにも検察を信用し過ぎているので、容疑をかけただけで実質処罰したと同等の効果があるが故に本来検察は慎重に捜査すべなのだが、検察は自らダメージを受けでも小沢一郎にダメージを与えたい強い動機があったのだろう。
捨て身の技で勝ったが故に、検察とて無傷ではない。かつて自民党の政治家が特捜沙汰になったケースで、検察批判はほとんど起きていない。かつてはより強固な無謬神話があり、それが僅かではあるが傷ついたのは事実で、一部の人たちではあるが、このまで検察批判が盛り上がったことはない。それでも圧倒的に検察を信用しているのは事実で、今回の勝利に繋がったのではあるが。
こんな捨て身の技は今後多用できないだろう。多用すれば無謬神話は音をたてて崩れる。今回、検察はそういうリスク承知でもカードを切る決断をしたのだ。
ある意味最悪の結果 小沢一郎幹事長続投
ここで民主党幹事長後任人事となれば、政治ニュースを独占し、例えば輿石参院会長みたいなよほど変な人選をしない限りは一次的にでも支持率を盛り返すこもできただろう。灰色の印象を持たれたままの幹事長を擁することで、民主党は最悪の状況になったとも言える。昨年、自民党は小沢代表のクビを取ることに成功したようで、実は民主党の支持率回復を誘発し、総選挙で大敗*1してしまった。今回小沢幹事長のクビを取らないで、敢えて温存させるのは、昨年の反省の結果であり、実は自民党にとっては最もハッピーシナリオなのだ。
やはり最強の武器は「小沢辞任カード」
ただ自民党にとってのハッピーシナリオだとしても、自民党が参議院選挙で勝つのは相当難しい。今の体たらくではいくら民主党の支持率が下がっても、自民党の支持率が浮上する気配がないからだ。
仮に自民党の支持率が回復して逆転する自体になれば、民主党には「小沢辞任カード」という最強の切り札がある。昨年は「代表辞任」というカードで支持率を回復することに成功した。参院選直前に「幹事長辞任カード」を切って、政治ニュースを新幹事長選任の話題で染めて、自民党に関する報道を極小化してしまうことができる。また小沢一郎は極めて国民的人気の低い政治家の典型である。彼がやめて別の人に交代すれば、よほど酷い人選でない限り印象がよくなるのである。
国民に人気がない政治家をわざわざ擁する意味
では、なぜ民主党はここまで人気のない政治家をヘッドに据えているのであろうか。よく言われるのは選挙戦術に長けているという点である。小沢不人気で無党派層の票を逃がすリスクを見ても余りがある能力があると思われているので、ここまで重用されているのである。また自民党が小泉政権以降、党内の実力でなく国民的人気を基準に総裁が擁されるになり、それが一時的に成功したようで、実際には自民党の弱体化に拍車をかけたという反面教師もあるのかも知れない。
また自民党にとって、民主党の看板が不人気な政治家から人気のある政治家に代ることにデメリットより、小沢一郎が失脚することで民主党に軍師がいなくなることのメリットの方が大きいと考える向きもある。ただ刑事責任と紐付きでない形で、中途半端な時期に体調や年齢を理由に辞められてしまうと、失脚にはならず、今後もあらゆる形で影響力を行使することになり、リスク回避にはならない。