国内で政争の具になっているうちは米軍基地問題は絶対に解決しない

 普天間問題は解決できないであろう。なぜなら外交問題を国内の政争の具にしたら負けだからだ。日本国内に「アメリカの言うとおりにした方がいい」という世論が一定数あるうちは、アメリカは日本に譲歩する意味がない。外交というのは国会の議席数はあまり関係なく、国内の世論が統一できて始めて相手国に交渉できる条件が揃う。国内世論が分裂している状態ではまともな交渉などできる訳はない。
 政争の具にしているのは自民党を中心とする野党側かも知れないが、そもそも民主党社民党自民党の沖縄政策に対して批判を続けてきて、これを政争の具にしてきた。下野した自民党は意趣返しに今度は鳩山政権を基地問題で追い込もうと政争の具にするのは目に見えていた。そもそも最初からボタンを掛け違えていた

鳩山政権に解決できる道はあったのか?

 最初からボタンが掛け違っていたので、最初から解決困難な問題ではあったが、解決する方法がなかった訳ではない。鳩山政権で解決するとしたら、時間をかけるしかなかった。ところが、鳩山総理は「早期解決できなければ日米関係が危うい」というプロパガンダにまんまと引っかかってしまった。最初に批判されることを恐れず、当面普天間基地の使用を継続する決断をし、米軍基地が沖縄に集中することへの配慮する世論が固まるのを待つべきだった。
 拙速に動いたために墓穴を掘った、結局、米軍基地のような迷惑施設は誰もが嫌なわけで、普天間基地の移設候補地の名前が出るたびにそこで反対運動が起こり、結局、多くのヤマトンチューは「米軍基地は沖縄に押し付ければいい」というのがホンネであることを露呈させてしまった。せっかく米軍基地が沖縄に集中することへの配慮する世論が広がりつつあったのに台無しである。
 ゆっくり世論工作をして「アメリカの言うことを聞くのが一番」とか「海兵隊基地は沖縄県内にあるのがよい」という意見を言うのが困難な状況を徐々に形勢し、「民主党政権はなにをもたもたしている。早くアメリカと交渉して、普天間基地移設を交渉しろ」という強い世論が本土を含めて起きるのを待つべきであった。
 そのような状況だと、自民党も「アメリカの言うことを聞け」と言うと世論のウケが悪いので、あまりこの問題で与党を攻めるのを止め、保守系メディアも世論を気にしてトーンダウンしていたはずだ。
 日本国内の世論を一つになれば解決への道に一歩近づく。その場合アメリカもある程度日本に譲歩せざるを得なくなる。その場合、アメリカ大統領や高官が日本の要望を無視し続け、袖にすれば日本国内の反米感情は高まるからだ。
 ところが、国内世論が分裂している今回のケースでは、アメリカの大統領はいくら日本の総理を袖にしても、日本の国内で悪い印象を持たれない。日本では与党の外交方針を批判したい勢力が、日本の総理が袖にされるのをかえって喜んでくれるからだ。
 残念ながらもう手遅れである。今から国内世論を統一するのは不可能に近い。

米軍基地問題 沖縄の負担軽減は自公政権になる気があれば解決可能であった

 また自公政権時代に普天間基地の県外移設の方針を打ち出していたら意外と簡単に解決できたかも知れない。と言うのは仮に自民党普天間基地の県外移設を党の方針として決定して党議拘束してしまえば、国内の政争の具としての基地問題には終止符が打たれ、外交問題に昇華していたからだ。「アメリカの言うとおりにした方がいい」という勢力はは仮に自民党が県外移設を言い出したら怒るだろうが、国会内で形勢が固まってしまえばもうどうしようもないので、「アメリカの言うとおりにした方がいい」という世論はだんだん消滅していっただろう
 もちろんこの仮定は無理であったのは百も承知だ。可能だったとしたら、公明党が定額給付期金みたなので頑張るんじゃなくて、こういう問題で頑張っていた場合ではないか。
 残念ながら民主党政権でこの問題の解決するのは最初から難しい話しであった。それは民主党や鳩山総理自身が非力な以前に、この問題が国内の政争の具になり下がって外交問題に昇華できないことが明らかだったからだ。

保守政党がリベラルな政策を実行したり、リベラルな政党が保守的な政策を実行した時に地殻変動が起きる

 以下蛇足な話だが、政治と言うのは保守政党がリベラルな政策を実行したり、リベラルな政党*1が保守的な政策を実行した時に地殻変動が起きる。なぜなら、国会内に勢力がいなくなるので一気に問題解決が進むからだ。
 逆のケースでは法人減税や消費税アップは民主党政権の方が実現しやすい立場にある。仮に民主党がは法人減税や消費税アップをぶち上げれば、自民党自民党から派生した第3局政党も反対しにくい。選挙でも法人減税や消費税アップに反対する人の受け皿政党がほとんどなくなるので、例え反対の世論が強くても民意は正しく反映されなくなる。
 「保守政党がリベラルな政策を実行したり、リベラルな政党が保守的な政策を実行した時に地殻変動が起きる」というのは欧米の政治を研究している人には常識的な話で、したたかな官僚や圧力団体は、今民主党政権に法人減税や消費税アップをやらせようとしている。自民党政権時代より実現可能性が高いことをよく知っているからだ*2
 保守政党が政権を取ると、政策が右にブレる。リベラルな政党が政権を取れば政策が左にブレるとことばかり気にしている人は本来は政治素人なのだが、政権交代の経験のない日本では仕方ないのかも知れない。

*1:私個人的には民主党は必ずしもリベラルな政党だとは思っていないのだが…

*2:私はいまこの動きをもっとも警戒している。