日本の植民地支配は間違っていたのか?

 私は植民地支配を正当化する歴史修正主義には与する気もないし、間違いであったと思うが、植民地支配自体が過ちというよりその治世に誤りがあった方に重き多く考えだ。
 そもそも民族国家という概念が定着したのが戦後であり、現在では主要な民族は独立した国家を形成するのが望ましいとの国際的コンセンサスが出来上がり、アジア、アフリカには旧宗主国から独立した民族国家が次々と誕生した。
 確かに民族国家という形態は少数民族の問題などを除けば、その国家の行く末はその民族の自己責任であり、貧しさの責任を搾取する宗主国に押し付ければよかった植民地主義の時代に比べて問題がわかりやすくて便利だ。しかし独立後政争や内戦が絶えない国も多く、民族国家という形態が国際問題の最終解決に程遠いのは周知の通りだ。現在でも自民族による苛政より他民族支配による徳治の方がマシという考えもあり得る訳で、民族国家に反する国家体制を完全に否定してはいけないと思う。
 ただその考えは戦前の帝国主義の根拠にもなり、未開の民族への保護、啓蒙を根拠に列強による植民地支配が正当化された。実際には資源や労働力を念頭に置いた列強経済的利益が目的であったのは明らかで、様々な大義名分はいずれも歴史的評価に値しないものばかりだ。ただプロセスとしての植民地をこの時代に不適当であったとは言えないし、万が一徳治が行われていたら、歴史的評価を得ていた可能性も否定できない。
 では日本の植民地支配がどうであったかと言えば、徳治とはほど遠いもであった。少なくとも経済的には搾取であったし、文化政策皇民化という日本への同化政策を進めた点では西欧列強の植民地支配より悪質であったと言える。一部では日本のアジア進出を歓迎する勢力が東南アジアやインドで萌芽したが、現実の治世は結果的にそれらの勢力を失望させるだけの結果に終わった。日本ももう少し日本に同化させるのでなく、地域の民族の伝統や文化を尊重し、日本と同じ価値観ではなく地域の実情に合わせた価値を共有する政策が取れれば少しは反発も少なかったであろう。