親の働く姿と子供という切り口

 少しマイナーな意見だと思うが。今回運転士は子供に自分の仕事振りを見せていた訳である。子供に親の仕事振りを見せることを発達心理的な価値。あるいは家族とは父権といった、どちらかの言うと右寄りの人が重視する価値観から見て評価する考えもある。一部に誤った行為があったとしても、価値ある行為を解雇という一振りで完全否定されては堪らないという考えもあり得る。
 江戸時代までは武士以外の農工商人の子供は父親の働く姿を見て育った訳である。それは父親の権威とか家族の絆というだけでなく、子供に生きることの厳しさ、或いは働くことの喜びも教えていた訳である。それが明治以降職住分離が進み、戦後は更に農業も衰退し、商業も自営商店が激減し、企業化が進み、現在では親の職場に住む子供は稀有な存在になってしまった。
 「親の働く姿を見せた父親がそんなに簡単に断罪されてたまるか」という思いも、抗議の中に含まれているのではないか。