「伝統」とは保守であり革新である。

 「伝統」に対する誤った認識が伝統を滅ぼす。変化を拒み、人々の心を捉えることができなてなって消えていった古典芸能は過去に数知れない。あるいは伝統工芸家が高級品ばかり作るようになり、一般庶民はプラスティック製の食器を使うようになってしまったらどうなるのか?一見「伝統を守る」という態度が伝統を滅ぼすことになっているのである。
 もちろん時流に迎合ばかりするのは良くない。あくまでも歴史的蓄積を継承していなければ価値はなく、断絶した時点で新興文化と何ら変わらなくなってしまう。伝統を守るというのは非常に難しい行為なのであり、保守的態度と革新的態度を兼ね備えていなければ成し遂げられない行為なのである。