秋山郷

 現在国道405号線通行止めになって孤立状態になっている長野県栄村秋山郷
なぜ長野県の集落なのに新潟県からしかアプローチできないのか不思議に思っている人も多いであろう。夏は雑魚川林道を通れば新潟県を通らずにアプローチ可能である。
 温泉マニアの私もかつて、河原を掘ると温泉が出るという場所があると聞いてきったことがある。切明温泉という温泉通にはよく知られた温泉で年末のTOKIOが出ているテレビ番組でも放映されていた。その時は長野県の志賀高原からアプローチした。しかし志賀高原山ノ内町であって栄村ではない。実は栄村中心部のある森宮野原から秋山郷は直接アプローチできる道はない。なぜ秋山郷が長野県(或いは歴史的に信濃国)なのか、昔から不思議であった。山口村岐阜県中津川市越境合併するニュースを見て、秋山郷新潟県津南町越境合併すればいいのにと思った次第である。
 この集落を縦断する中津川は面白い川だ。道路は切明温泉でどん詰まりのように見えるが、先ほど私が紹介した雑魚川林道に沿って雑魚川という中津川の支流が続いており、上流を遡ると急に広い高原地帯に出る。そうそこは奥志賀高原なのだ。志賀高原へはほとんどの人が湯田中からアクセスするため、千曲川支流の夜間瀬川の上流にあると思っている人が多いが、奥志賀高原分水嶺を超えて雑魚川水系にあるのである。上流に行くほど谷は狭くなるという常識の全く逆を行く面白い川だ。
 切明温泉から本流もまだ続いており、まもなく県境を越え、野反湖に至る。野反湖はれっきとした中津川の上流のダムであるが、自動車では群馬県からしかアプローチできず、この間は徒歩でしか遡ることができない。ちなみに小栗上野介会津へ脱出したルートでもある。
 私も秋山郷に行ったときは本当に驚いた。どうしてこんな山奥の平地のほとんどない深い谷間に人が住んでいるのかと。この集落には「のよさ節」と言う有名な民謡が伝わっている。この民謡は間宮芳生氏によって合唱曲に編曲されており、合唱経験者の私もこの曲を歌ったことがある。

 「うら家の衆は、嫁をとること、ノヨサ、忘れたか…忘れはせぬが…稲の出穂見て、ノヨサ、嫁をとる…」

 今でこそ孤立集落と騒がれているが、ちょっと前まで冬季は完全に孤立するのが当たり前の集落だったそうだ。それでも生き抜く力を持っている先人の知恵をこの集落は蓄えている。マスコミが大騒ぎしているが、この集落のお年寄りはこの事態に対して冷静に見える。