ようやく企業のモラルが問われるようになった日本。

 JR西日本脱線事故耐震強度偽装問題ライブドアと企業のモラルが問われる事件が相次いでいる。しかし日本において企業にまともにモラルを問えるようになったのはつい最近のことである。
 1980年代前半まではまだ冷戦と55年体制の影響下にあり、企業を厳しく批判する者は「アカ」とのレッテルを貼られた。確かに企業の不祥事を厳しく批判する勢力の多くは左翼であり、保守勢力は概して資本の走狗であった。いわゆる右翼の多くも贈賄企業や自民党金権腐敗を糾弾していたのではあるが、余り話題になることはなかった。
 日本が正常な状態になったのは90年代以降である。ようやく企業に厳しい倫理を求めるようになり、利益や効率優先の経営が普通に批判されるようになった。今考えれば80年代以前の日本は「経済ナショナリズム」の時代だった気がする。企業は護送船団方式の下国家の庇護にあり、企業の利益が国民を幸せにする仕組みが出来上がっていた。
 「チッソ」や「カネミ倉庫」があれだけの被害をもたらしながら、被害者救済のために政府の庇護の下存続を許され、未だにのこのこと事業を続けていることを考えれば隔世の感である
 この時代は狂っていた。公害病患者が地元の利益を優先する他の住民のバッシングに遭い*1、加害企業への行政指導や司法のメスは様々な政治的圧力で遅々として進まず、企業の利益を代弁する加害企業の労組の圧力で野党まで厳しい追及ができない。保守系を自称するマスコミは被害者の声を拾うような報道は左翼の仕業と加害企業側に甘い報道をしていた。
 現在は企業に厳しい論理を求めるのが当然になっている。それ自体はイデオロギーの問題でなくて、当然のことなのである。しかし未だに80年代以前の脳ミソの人間が生き残っている。そいつは武部幹事長だ!耐震強度偽装問題に関して「悪者探しをすると景気が悪くなる」という発言はまさに80年代以前の経済ナショナリズム時代の遺物だ。
 彼は今、「ライブドアの家宅捜索をしたから株価が下がって景気が悪くなる。」と言いたいのではないか?自民党改革政党に生まれ変わったと本気で信じている人が世の中にはいるようであるが、未だに前時代の遺物のような政治家がゴロゴロしているのである。
 企業に厳しい態度を取ることが、本当は企業を強くするのである。甘やかせれば弱くなる。経済ナショナリズムの過ちに未だに気付いていない哀れな政治家が。

*1:被害者バッシングという行為自体は今の時代も絶えないのだが……