保守二大政党論

 保守二大政党の可能性を最初に気付いたのは小沢一郎であると言われている。彼は自民党幹事長時代に党本部主導で1991年の都知事選挙*1に元NHKキャスターの磯村尚徳を擁立、現職の鈴木都知事を支持する都本部と対立し、結果的に彼は敗北している。
 中央主導で豪腕を発揮する小泉純一郎が拍手喝采を浴びているのに比べ、こと時の小沢一郎は悪者以外の何者でもなかった。時代とは皮肉なものである。
 この選挙で社会党共産党の公認候補か完全に泡沫化し、小沢一郎は保守二大政党の可能性を確信し、後の自民党からの集団離脱に至ったと言われている。
 私は長らく保守二大政党論には懐疑的であった。特に理念に差がない2つの党がどちらがよい法案を出せるかと争うという仕組みは、立法府と行政府の役割分担が明確な国ならともかく、日本のように議員立法が盛んでなく、政府提出法案がほとんど成立するような国では与党に利するだけであると考えていたからだ。
 しかし、90年代末期になるといよいよ保守や革新という言葉が実態を失い、対立概念を失った保守という概念が一体性のないものであることが露呈する。90年末期はは旧来型保守の自民党に対抗する新自由主義勢力として新進党自由党保守左派新自由主義社民主義の寄り合い所帯である民主党という構図であるかのように見られた。
 小沢一郎の誤算は、自分が内部改革は無理と見限った自民党を、小泉純一郎が短期間に新自由主義的改革政党に変貌させてしまったことであろ。ただ現実的には自民党内部では小泉チルドレンは別としてベテラン議員に新自由主義者はそう多くはない。首相候補筆頭の安部晋三新自由主義者ではない。むしろ民主党の方が新自由主義者が多い。
 本来、自民党の旧保守的な政策に対し新自由主義的な改革を訴えていた人たちが小泉的な新自由主義を批判して批判票を集めなければいけないというパラドックスが生じた。今後は二つのシナリオが考えられるであろう。
 一つは安部晋三自民党総裁となり、経済政策から教育政策等のメンタル的なものを全面的に打ち出した場合、小沢一郎らが経済政策で修正小泉主義的な政策を継承し、経済軽視を不安視する経済界等の支持を集めようとするシナリオ。これはブレア労働党政権が実質的にサッチャリズムを修正した形で継承したケースを想定している。
 もう一つは自民党安部晋三なり誰がなるなり、経済政策で小泉流を継承。民主党格差是正などのリベラルな政策を前面に出すケース。
 後者の方が理念を基盤にした二大政党の教科書に近くなるが、政権交代の可能性では後者の方が低い。日本だけの傾向ではないが、現在はリベラルを前面に出した政党が政権を取れる可能性は低いからである。世界的に左派政党はポストケインジズム的な理念を打ち出せずにいる。あと10年以内に何らかの潮流が生まれるのではと個人的には期待しているのではあるが……。

*1:私は20歳になる半年前で選挙権がなかった。