日本人から欠如してゆくビジネスというマインド

 ゲームは一般的には誰かが勝者になり、誰かが敗者になる。しかし、中には全員が勝者になったり敗者になるゲームも存在する。
 一般にビジネスや外交というものは後者であり、むりろ両者が勝者になり得る場合に成立するのがビジネスや外交である。
 教育問題での議論は、いづれかが勝者か敗者になる「女王の教室」のようなゲーム的な思想か、「おてて繋いで仲良くゴール」に象徴される日教組的な平等のオルタナティブなものであるが、本当のセオリーは両者が勝者になる方法を探るビジネスのマインドである。これは学校教育で全く欠けているマインドで、ほとんどの人が社会人になってからこのマインドの洗礼を受ける。
 先のエントリーで国民感情がワンパターンだと言ったが、これはちょっと言い過ぎで、ブッシュのパフォーマンス外交は一般に低所得者や農村部で支持されているだけで、都市部では余り支持されていない。一般に都市部の中所得者以上の人は「ビジネスのマインド」を持っているので、真の国益の議論を放置したままパワーに依存して相手国を一方的に屈服させるパフォーマンス外交は支持されない。
 ビジネスにおいて取引先や下請先を一方的に叩いても、長期的に利益にならないのは当然のことである。ビジネスでも外交でも、両者共通の利益というものはせいぜい4割で、残り3割を相手に取らせ、残り3割を自分が取り、トータルで7割の得をすれば合格という世界である。若干は譲歩しないとトータルで利益は得られないことがほとんどである。
 100%勝たないと気がすまない、1mmでも妥協すれば立腹する。勝つか負けるかのゲームの世界しか知らない人間が陥る罠である。ただアメリカではこのような国民の方が数の上では主流であり、国民感情の主流となるので政治はそのマインドを意識する。日本でも若者の未就労或いは単純労働へのシフトによって、ビジネス的なマインドを得られない人間が増えている。私は90年代移行の2ちゃんねる的言動は、右傾化うんぬんの問題ではなく、若者の就労環境の変化により、国民全体がビジネスマインドから単純ゲームマインドへウェイトが移行したことによると考えている。