「日本、格差大きい国に」・OECDが審査会合で見解

 「国際比較でみると、日本はもはや平等な国ではない」――。26日に経済協力開発機構OECD)が開いた対日経済審査会合でOECD事務局がこんな見解を示していたことが明らかになった。7月20日に公表する対日経済審査報告でも「所得格差の拡大」について一章を設ける見通しだ。

 OECD事務局は所得格差を示す「相対貧困率」や「ジニ係数」などの指標を根拠に「OECDの平均よりも格差が大きい国になった」との主張を展開した。正社員とパートタイマーなどの給与の違いが原因とみており、チーフエコノミストのコティス氏は他の先進国の経験を念頭に「格差が定着しないように警告すべきだ」と提言した。
6/27 日経新聞

 大手新聞社の中では、もっとも格差問題報道に消極的であり、「日本は外国に比べればまだ平等だ」というような経済評論家や財界人のコメントを載せ続けている財界御用新聞でありますが、さすがに国際機関の発表は事実を掲載した。
 もっとも経済界だって労働者の賃金は安ければ安いほどいいとは思っていない。輸出依存の発展途上国ならばそれでいいが、国内消費を支える中間所得層が没落して一番困るのは経済界のはずだ。国内の消費力が落ち、人件費も下がったので、かつてのような輸出以前国に回帰しようなんてことを考えたらアメリカ様が黙っていない。年次改革要望書で、日本の労働者の賃金を上げて国際競争力を低下させ、代わりに購買力を上げろ等と言ってくるかも知れない。*1
 それなのに、なぜ日本にこんなに低所得労働者が増えてしまったのか?低所得労働者が増やすベクトルはそんなに強くないはずなのに。

日本式経営の見直しと税制改正のダブルレンズ

 なぜここまで短期間に急激な格差拡大が起きたか。これは民間サイドでの賃金制度の見直しと政府サイドがパラレルに起こったからに他ならない。政府は平成6年に最高税率を88%を65%*2に、平成11年に50%に減らし、一方課税最低限は平16年に配偶者控除特別控除の上乗せ分が廃止され、実質低下*3している。
 民間サイドで労働慣行が変化し、確実に格差が拡大している中で、政治家や官僚は古い統計資料や先入観から日本の悪平等を説き、税の所得再配分機能の縮小を続けてきたのである。民間と政府が同時に所得格差を誘導すれば、急激に拡大するに決まっている。政府は民間レベルで所得格差が拡がっているのに気づけば、無理に税制をいじって最高税率の引き下げや課税最低限の引き下げを実施する必要はなかったのではないか。

*1:それならば私も明日から親米になりますが…

*2:所得税+住民税

*3:いつのまにか、日本は先進国で最も課税最低限の低い国になってしまった