小泉外交の失敗と靖国カード

 小泉総理の靖国参拝以前の問題として、まず小泉総理が最初の自民党総裁選で8/15に靖国神社を参拝すると公約した時点での見通しの甘さがすべての癌であった。この時点ですでに失敗であったと考えている。こういう外交で自縛する公約はしないというのが保守政治の英知であったのだが、みごと無視した。
 結果的に中国に「靖国カード」を与えてしまった。中国はこのカードで中国に進出している日本企業の許認可等を蹂躙し、適度に邪魔をしたり、企業に関係ないインフラ整備の資金などの拠出させたり(ひどい場合は賄賂なども得て)して実利を得ている。だったら中国に進出しなければいいのではという意見もあろうが、企業の立場からは中国マーケットを掌握するには中国に拠点を持つことは重要であり、背に腹は変えられない。
 また「靖国カード」は逆に日本の切り札になるという話もあったが、小泉政権ではついに使えるものにはならなかった。*1
 強硬手段で妥協を一切排してスジを通し続けて、相手が根負けするのを待つという手段は確かに韓国に対しては使える。韓国はかつて中曽根政権時代の教科書問題で、日本人のタクシー乗車拒否といった運動を行ったが、日本人観光客が来なくなり経済的に韓国の方が損をしてしまったという苦い経験があり、以来歴史問題で抉れても、一部の大衆運動が過熱したとしても必要以上の問題にしないという流れが出来ている。
 ただ中国に関しては日中間の通商がうまくいかない場合、現状では日本の方が損をする状況にある。中国の購買力拡大にともない輸出は増え、中国製造業向けの部品輸出も増えている。輸入に関しても日本企業や商社による開発輸入が多く、日本の国益となっている。中国に対して強攻策を続けることは、中国の持つ「靖国カード」の効力を担保するだけではないか。
 いづれにせよ、次の政権では小泉総理のボタンの掛け違いを繕わなければならない。そのためには中国以上に日本が強かにならなければならないし、日本国内のナショナリズムを煽ってもいけないし、かなり難しい舵取りを迫られる。
 

*1:もしかしたら安倍政権下で切られるかも知れないが