蟻の兵隊

 第2次世界大戦後の「日本軍山西省残留問題」に関するドキュメンタリー映画。これは戦争に対する憎悪を掻き立てることに終始するプロパガンダ反戦映画ではない。等身大の元日本兵に迫っているドキュメンタリーだ。
 戦後多くの帰還兵が「兵士の沈黙」という形で戦争体験を封印したまま、戦後の日本の復興に邁進した。沈黙には重い意味があり、戦争を知らない我々がその沈黙を破らせるようなおこがましい真似はできない。しかし、晩年に口を開こうとしている戦争体験について、耳を傾ける意義は大きい。
 戦争に対していろいろな総括の仕方はある。ただ戦争を体験した人間の自らの総括については、どんな形であれ、それはそれで尊重すべきであろう。戦争を知らない人間が論評すべきものではない。