戦争したい人っているの?

 今の時代に本気に戦争をしたい人がいるのか? ほとんどいないであろうというのは誰でもわかる答えである。
これは以前のエントリー「天皇制を廃止したい人っているの」と同じロジックで、天皇制の場合、ウヨクが極端な左翼思想をでっち上げて、さも多くの左巻きの人たちが天皇制を廃止しようと企んでいるかのような言説を巻く行為だが、天皇制廃止論者が極めて少数で、このような議論が無意味なことは周知の通りである。
 戦争をしたい人というのはサヨクが極端な右翼の思想をでっち挙げて、右巻きの人がさも戦争をやりたがっているかのような言説を巻く行為で、実はこちらの言説の方が古くから存在した。安保闘争においては、政府や自民党は好戦主義者のレッテルを貼らるのが常であった。朝鮮戦争時はともかく高度経済成長期後の日本の産業構造は世界の秩序が維持されればされるほど繁栄が担保される構造となっており、実際には経済界の代弁者たる自民党が好戦主義にはなり得ないのである。
 サヨクの強引なレッテル張りの手法が、転向右翼によって保守運動の中にも影響を与えたのだろうか。これらの手法は無知な人間を煽動するのは一部有効*1であるが、基本的に議論を不毛にするだけで何の価値もない。
 話を戦争に戻すと、中道左派から穏健左派までの戦争感*2と右派の戦争感は、前者が戦争をしないことで平和を実現しようという思想、後者が平和を乱す勢力を叩いて平和を実現という思想というアプローチの違いである。右派の人は前者を消極的平和主義、後者を積極的平和主義と言ったりもする。
 実際はどちらが正しいくてどちらが間違っているとも言い切れるものではない。身近な例だと、例えば銃刀類に関して日本は国民に持たせないこちによて安全を構築する考え、アメリカでは国民の自衛権を尊重して銃刀を持つことを認める思想だが、安全の実現という意味では前者の思想が勝っている。しかし現実に凶器を持った人間が多数いる社会では、前者の思想は現実問題には対処できない。 
 消極的平和主義というのはレッテルで、実は世界中から兵器をなくす刀狩的な行為を行うのは、悪をもぐら叩きのように叩く積極的平和主義よりよほど強いパワーが必要で、極めて難しいテーマである。残念ながら世界中から兵器をどうしたらなくせるかというテーマに答えを出せるつわものは現れなかった。それでも人類の発達を信じてあくまでも理想を追求しようという考えと、世の中には常に平和を乱す勢力が登場し得るという前提に立った現実的主義の立場の違いは残るであろう。
 最後に、戦争したい人がほとんどいないというのは日本では通用するが、世界ではまだまだ戦争したい勢力が存在する。一番の汚点が軍需産業であり、下手をすれば国際的不安を煽る可能性すらある。あと危険なのは軍隊。軍隊は有事には人員が膨張するので下士官が出世しやすくなり、平和時には軍縮により昇進できなくなる。そんなくだらない理由で戦争をしたがるのが軍隊で、現に日本の旧軍にも見られる現象であった。人間というのは極めて閉鎖された社会内での昇進や名誉にこだわるというのはオウム事件で見られた通り、極めてくだらない動物なのだ。(特にオスは。)
 日本の自衛隊は平和主義の軍団なので心配していないが、外国の軍隊はシビリアンコントロールが為されているとは言え、戦争をしたくて疼いている軍隊は山とあると考えた方がいい。
 世界標準の考えで言えば、まずは戦争をしたい勢力をどうリデュースするかを考えないといけないようだ。

*1:いわゆるB層向け宣伝

*2:極左は暴力主義者なので除外