経団連御手洗ビジョンについて

日本経団連御手洗冨士夫会長)が来年1月1日に発表する将来構想「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)の原案が11日、判明した。
12/11朝日新聞 
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 全体的に本音出しすぎ、表に出すぎという印象を受けた。もっとも財界はこう考えていますと正直に意見を出すのは良いことかも知れない。内容的に生活者や労働者との利害対立が鮮明となるものが多いが、何でも曖昧にする安倍総理なんかよりは余程わかりやすい。むしろ曖昧な安倍政権にスポンサーである財界の言うことを聞くのか、マスコミが言うように無党派層を意識した政策を重視するのは踏み絵を踏ます効果もあろう。たが正直、このビジョンは政権の足を引っ張る性格が強い。
 元々は財界と多くの有権者の利害など対立する部分が多く、選挙が近くなると有権者寄りに、終わるとすぐに財界寄りの政策を取る自民党流でこの50年間やってきた。財界も世論を重視し国民受けする政策を打ち出して自民党に選挙で勝って欲しいとは思っていないし、それより世論の不評を買っても保守政党らしい企業活動重視の政策を打ち出して欲しいと考えている。選挙には政権を維持できる程度に勝ってくれればいい、その為に金は出しますというのが財界のスタンスである。保守系マスコミが描くの国民運動と一体化した新しい自民党像など財界は求めていないのである。
 また財界がなぜ憲法改正?という疑問もある。これについては戦後経済保守主義者と観念保守主義者の蜜月関係の遺産であろう。経済保守主義者は軍事や文化的保守主義にそれほど関心はないが、一緒にやってゆくためにリップサービスで「同じ考えだよ!」と表明する腐れ縁関係がある。
 御手洗ビジョンにも明記されているが、実は「外国人労働者」問題が現実問題として浮上すると、経済保守と観念保守は仲良しごっこを維持できなくなる。既に靖国問題アジア外交で経済保守と観念保守の綻びが見られるが、あと数年で両者の対立は決定的になり、経済保守と観念保守の同舟政党である自民党もその存在基盤が大きく揺らぐであろう。