与党の2007年度税制改正大綱について

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平成19年度税制改正大綱 自民党
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12/14 時事通信「来年に税制抜本改革=減価償却で企業優遇−07年度減税4500億円・与党大綱」
12/15 フジサンケイビジネスアイ「07年度税制改正大綱 成長重視で企業に厚く」


 これの批判についてはもっとクールに行うべきではないか。批判している人の多くが、あまり税制の問題に踏み込んでおらず、「企業減税」「個人増税」という結果を批判している。
 償却可能限度額の撤廃は国際会計ルールの流れであるし、同族会社の留保金課税制度についてはグレーな問題ではあるが、自己資本の充実が求められる現状ではある程度の緩和はやむ得ない。問題はこれら企業向けの減税の財源を企業に対する課税に求めず曖昧にしてしまったことである。安易な減税はこれまでの国民に痛みを求める姿勢と矛盾し、今後の消費税増税などでの国民の理解を得る際のネックとなる。政治的には愚行としか言いようがない。
 実質的に所得税定率減税撤廃が原資と見做されても仕方ない。よく見ると税務のプロに批判しにくい減税をうまくしてやられ、すかさず「弱者救済色を薄く、強いところを延ばそう!」という保守イデオロギーを発揮する機会をゲットしてしている。
 ただ批判されないだろうと思うのはプロの意見で、素人は税制の諸問題はスルーして、「企業減税」「個人増税」という結果のみを批判に対象にしてしまうから、この大綱の評判はすこぶる悪い。特に支持者がセンシティブな庶民が多い公明党はこの大綱を支持者にどう説明するのであろうか、他人ごとながら心配である。恐らく自民党の税制のトリビアな問題の議論の煙に巻かれて、企業課税と個人課税のバランスという対極的な視点からの議論をしなかった結果であろう。今回は財界と自民党の税調メンバーの姿が突出して、公明党の顔が全然見えなかった。
 しかしホワイカラーサラリーマンは自分の源泉徴収額より自分の会社の納税額をいかに減らすことを日々考え、自然にこのような大綱を支持するような社畜化が目立つ。自民党が「個人増税」「企業減税」の政策を今後推し進めても、大都市では意外と支持されるかも知れない。自民党が最近都市部の選挙で強いのは、個人の利益より会社の利益を考える社畜が多く住むのと、「弱者に厳しく強者に優しい政治」を求める本当の金持ちが多いからであろう。
 また企業減税と個人減税どちらが景気刺激効果が大きいかという冷静な判断も経済政策推進には必要である。残念ながら経済界はより短期に効果の見える企業減税を当然の如く求めるし、消費者や勤労者の代表が排除され、経済界代表が2名も臨席している現在の政府税調では冷静な議論は期待すべくもないし、自民党税調も然りである。