選挙の年 夏の参院選の勝敗ポイントは

 今年は統一地方選参院選と続く選挙の年である。地方選挙の方は私もよくわからないので割愛して、夏の参院選の勝敗ポイントについて考えたい。参院選の場合、過去の趨勢から分析する必要がある。

  • 1998年 橋本内閣
    • 96年の発足当初60%を超える支持を集めた橋本内閣も佐藤孝行氏入閣と消費税アップで支持率が40%を割る中で選挙戦に突入。
    • 一方、野党は97年末に新進党が解党。相次ぐ政党再編で政党不信が蔓延しており、橋本政権与党だった旧さきがけ、社民党議員が中心となって結成された民主党も、新進党の非公明議員が中心となって結成された自由党も支持率が伸び悩んでいた。
    • 共産党が歴史的勝利、非自民の各政党が政党再編で支持者が流動化する中で支持を集めた。
    • 結果:自民50 民主32 自由6 共産15 公明10 社民2
    • 自民党敗北ではあるが、非自民政党の基盤が確りしていれば、自民党は更に惨敗した可能性があり、野党の基盤の弱さに救われた。
    • 橋本内閣は参院選敗北の責任を受けて総辞職
  • 2004年 小泉内閣
    • 小泉政権が高い支持率を維持していたのにもかかわらず自民党が敗北。
    • 小泉内閣支持者が民主党候補に投票する行動が多く見られた。自民党の候補者が旧態依然としていて、候補者を見て民主党に投票した人も少なくなかった。
    • 小泉改革が徐々に浸透し、地方を中心に従来組織の離反が見られ、集票力が低下した。特に参議院は地方の議席配分が多いため、地方の民意が趨勢を決定する。
    • 結果 自民49 民主50 公明11 共産4 社民2

 まず直近の04年の総選挙からどう変わったか考察してみたい。ポイントは2つあって、地方の有権者小泉政権から安倍政権に移行して、離反を示していた人が戻ってくるかという点。もう一つは、都市部の候補者が小泉フィーバーの余韻が残る都市部の有権者の票を獲得できるかという点である。
 前者は今のところ安倍内閣は地方を再生させるメッセージは有権者には届いていない。先に地方活性化を重点項目としている民主党案を「バラ撒き」と批判しているが、バラ撒きでない地方活性策を自民党が出せるかがポイントであろう。はっきり言って地方はバラ撒き云々を批判している余裕はなく、より効果的で実効性の高い政策が支持されるであろう。
 後者の分析は非常に難しい。自民党は04年に都市部で小泉改革を支持する民意がなぜか自民党に来なかった敗因分析はできてはいる。ついこの前まで「道路作ります」「橋を作ります」と言っていた候補者が急に「改革だ!」と言った所でそう支持は集まらない。参院自民党古い自民党の巣窟であり、候補者を入れ替えなければ改革志向の民意は集められない。だが中川幹事長の候補者差し替えは頓挫し、今回も自民党は古臭い候補者のまま選挙戦を戦わなければならない。
 民主党の方も一筋縄にはいかないであろう。都市部では一昨年の郵政選挙を通じて民主党抵抗勢力とのレッテルを貼ったまま動いていない有権者も少なくない。民主党は小泉=竹中路線の構造改革安倍内閣以降の財界重視の経済政策に疑問を持つ有権者に対して一定の支持を得られるかも知れないが、04年の参院選のように強い改革志向を持った有権者の支持を集めるにはハードルが高い。
 ただ、郵政選挙を通じて候補者より党首の顔で選ぶ傾向が強まっており、例え自民党が旧態依然とした古臭い候補者を立て、民主党が若い粋のいい候補者を立てたところで、党首への支持の趨勢如何では自民党不利、民主党有利とはならない可能性もある。現に郵政選挙で小泉総理の力で魅力のない議員も大挙して当選している。安倍首相に小泉前首相ほどの力があるとは誰も思っていないので、この再現は難しいであろう。
 01年、98年の選挙結果も念頭に置く必要があるだろう。98年の選挙でわかることは、例え野党の支持率が低い状態であっても、内閣支持率が低下すれば自民党が惨敗する可能性があるということである。特に参院選政権交代の可能性がないので、政権交代の不安を煽るようなアジが利かず、与党に不利になりやすい。また当時のような政党再編疲れが一段落して、自民/民主の2大政党体制に限界を感じ再び政界再編機運が盛り上がる可能性もある。参院で与党が過半割れし、政界再編が誘発されることを期待する民意が生まれる可能性もある。
 01年の選挙のように、政権発足直後は結果が出ていないため、期待が膨らみ高い支持率が出やすい。ただ参院選前に安倍内閣が総辞職する可能性はないので、次期衆院選前にその可能性がある程度の話であろう。