日本は80年代前半以前の典型的加工貿易時代に戻ったのか?

 日本は戦後加工貿易により復興した国である。安い労働力で価格で欧米各国と戦った70年代以前から、80年代は本質で優位に立ち、国民所得も世界トップクラスとなり、産業も輸出型から内需型に移行し繁栄を極めたのが80年代後半のバブル時代であった。
 失われた10年を経て、日本は奇しくも輸出型企業先行の景気回復により不況を脱した。今の景気を維持しなければならないという掛け声の下、国際競争力至上主義がまかりまかり通りやすい。
 そういえば経団連の会長もトヨタ自動車からキャノンと輸出により好業績企業の経営者が就いている。彼らの発言は日本国民を国際的な労働ダンピング競争に巻きいれようとするものであり、このままでは日本は80年代以前の構造に逆戻りしてしまいかねない。いや、モラルの低い経営者が製造現場の労働コスト削減に血眼になり、製造現場のレベル・モラルが低下している現況を見ると、70年代以前の労働コストの安さで勝ち抜いてきた日本に逆戻りしかねない。
 我々は既に企業が繁栄しても必ずしも国民が豊かにならない現実を経験している訳だが、国民は何をすべきなのか。企業を敵視したところでは始まらない。ただ、利己的で目先の利益を追いかけ、社会的責任や国民の豊かさに無関心な企業には明確な鉄槌が必要であり、消費者としてはボイコット等の実力行使も考えるべきだ。また同時に、社会に貢献している企業を応援するスタンスも必要である。