柳沢発言と進歩的強迫観念

 柳沢厚労相に限らず、本当に安倍内閣は口が達者で思ったことを嘔吐物の如く吐き出す閣僚が多い。しかも困ったことに政治家の自由奔放な発言に好意的な世論が多いのである。
 これは90年代以降のバックラッシュ文化の影響であろう。80年代以前の思想界、マスコミの左傾化を支えてきたのが『進歩的強迫観念』である。つまりインテリゲンチアによりこういう考えが進んでいる考えで、この考え方を持つ人間は優れている、啓蒙されているというネットが張り巡らせらて、スノビズムに駆られた亜エリートがその網に囲まれて自然に左傾化していったのである。
 この網を窮屈に思った保守言論人により、90年代はこの網を破壊する活動が盛んに行われた。特に90年以降に保守思想に感化された人たちにとっては、本音で自由にモノが言えることが重要視されるのである。
 しかし、他人の嫌がることを言わないというデリカシーを持つことは「品格」であり、日本的価値観を重視する立場であれば堅持すべきものである。最近の保守主義は品格のある言論より自由な言論を重視するという、保守主義とは異質な傾向を示す逆転現象が見られる*1
 ここ数日。柳沢厚労相の発言を批判する発言に対する嫌悪感を示す意見を多く目にする。これも進歩的強迫観念を嫌悪する最近の保守主義の傾向をよく示すものである。しかしバックラッシュも進歩的強迫観念を根底から破壊する迄には至っていない。
 さすがに「女性は家に居ろ!」とか「子どもを産めばいい!」と堂々と言える人はいない*2のである。男女共同参画が是という進歩的強迫観念は極めて有効に機能しており、これを破壊できる人は既にいないのである。確かに80年代以前の左翼が張り巡らした進歩的脅迫観念は行き過ぎで窮屈過ぎた為にバックラッシュに遭うこととなったが、進歩的脅迫観念自体は既に否定不可能なものとして我々の目前に存在しているのである。

参考

 進歩的強迫観念について
id:kechack:20050329

*1:自称保守であって、本来は自由主義者なのかも知れないが……

*2:男だけの宴席でのたまうオヤジは未だに入るが