日本は国民所得を回復させ消費大国復帰を目指すべきである。−自動車産業の近況に見る−

  • 日本国内の自動車生産、米国上回り13年ぶりに首位復活 5/7朝日

 06年の日本国内の自動車生産台数が13年ぶりに米国を抜き、世界一に復活したことが7日、自動車産業調査会社フォーイン(名古屋市)のまとめで分かった。国内販売は2年連続で減ったが、北米向けを中心とした輸出増で国内生産は6年連続で増えた。米ゼネラルモーターズGM)などの減産が続く米国は4年連続の前年割れとなり、首位が交代した。
 フォーインによると、06年の日本国内の自動車生産台数(軽自動車を含む)は前年比6.3%増の1148万台となったのに対し、米国は5.9%減の1124万台と大幅に減少した。
 日本自動車工業会によると、日本は80年から93年まで世界首位だったが、日本メーカーによる北米での現地生産拡大などで、米国は94年から世界トップを維持してきた。だが、米ビッグ3が完成車工場の閉鎖を含めたリストラを北米で加速させ、労働コストの安いメキシコへの生産移管を進めたことが首位の座を明け渡す要因になった。
 調査対象となった世界44カ国の生産台数は前年比4.2%増の7032万台。中国が27.3%増で、ドイツを抜いて世界3位となるなど、新興経済国群BRICsの急拡大が目立っている。

 こういうニュースを見て、日本の経済の強さを確信しているおバカさんはいないであろうか?
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新車が売れない。戦後最長の景気拡大が続いているというのに、国内の新車販売台数は年々減る一方だ。「マイカー」が庶民のあこがれだった高度経済成長期と比べると、車の種類はセダン、ミニバン、SUV(スポーツタイプ多目的車)など豊富になり、ナビゲーション機能も付いて格段と使いやすくなった。なのに、売れなくなったのはなぜ? 自動車各社に妙案はあるのだろうか。
 ■ブーム再来なく
 国内の乗用車販売(軽自動車を除く)のピークは、バブル経済末期の90年度で、年間590万台が売れた。88年発売の日産自動車「シーマ」は、高級車ブームに火を付け「シーマ現象」という流行語まで生んだ。以後、減少傾向が続き、06年度は359万台(前年度比8.3%減)に。90年度比4割減で、29年前の水準にまで落ち込んだ。
 06年はトヨタ自動車と日産が、それぞれの主力車であるカローラスカイラインを全面改良し、話題性のある新車は多かったが、カンフル剤にはならなかった。
 維持費が安い軽自動車は06年度、過去最高の203万513台(同4.2%増)を記録したが、その軽にも陰りが出て、4月は16カ月ぶりに前年同月を割り込んだ。
 ■将来不安も要因
 業界の危機感の高まりを反映し、日本自動車工業会が初めて「新車が売れない理由」をリポートにまとめた。「乗用車を新車で買って、5年以内に買い替える傾向が減少した」と指摘。保有期間の長期化と、最初から車を持たない非保有者の増加により、新車が売れにくくなったのだという。
 リポートによると、公共交通網が発達した大都市への人口集中と単身世帯の増加で、車を持つ必要性が低下。さらに年収300万円未満の貧困層が拡大したことがある。だが何より、若い世代の興味や行動の変化が大きいようだ。
 ここ数年、20〜30歳代を中心に、将来の収入や家計負担に対する不安がより高まった。自動車各社が最大のターゲットにしている層だが、子どもの教育投資、住宅ローン、税金、金利、医療費などの負担が重くのしかかり、年金制度への不信も強い。消費は、自動車ほど価格が高くなく維持費もかからないデジタル家電を優先させる傾向が強まっているという。車に魅力を感じず、関心の対象は薄型テレビやデジタルカメラなどの新しい製品に流れているようだ。
 毎月の出費も、携帯電話やインターネット接続料などがかさみ、車が敬遠される要因になっているという。

 これは何を意味しているのか?
 日本が消費大国から工業国に逆戻りしているのである。消費大国においてはモノが売れるために国民の所得を向上させることが重視され、それによりモノが売れ企業の利益になる
 今の日本は、日本の旺盛な消費を支えた中間層が崩壊し、消費力の減退が顕著になったが、輸出でカバーできるので企業が国内でモノが売れないことをあまり深刻に考えない。むしろ労働者の賃金を下げて国際競争力を維持することを重視する。
 そろそろ日本の貿易黒字にアメリカも黙っていないだろうという見方もある。80年代は確かに円高誘導により日本国民の実質給与水準を向上させ、それにより日本の輸入が増え、日本の国際競争力を減退させることがアメリカの利益に繋がった。しかし今はアメリカは日本企業を投資対象として見るケースが増え、むしろ日本企業の労働配分率を下げ配当を求める。既にアメリカを日本の労働者の味方として期待するのは無理だ。
 このまま、輸出依存型企業の経営者が財界を牛耳り、その影響力を強く受けた政権が続けば、日本は安い労働力で国際競争力を維持して輸出で稼ぐ1970年代に逆戻りしてしまう。
 日本が消費国としての地位を低下させている間に、中国は消費国としての地位を確実に上昇させてゆく。世界の投資はより消費力のある国に集まり、日本は生産国としてメーカーが利益を上げているとは裏腹に、経済的地位をどんどん下げることになるだろう。日本=消費国、中国=安い労働力を武器にした生産国といったユニクロモデルの日中関係は急速に過去のものになろうとしている。
 私はこんな日本はゴメンだ。国内消費回復の必要性を重視する財界人、エコノミスト、政治家には、今こそ踏ん張ってもらいたい。