安倍内閣は憲法改正などできない
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070521k0000m010065000c.html
自民党も湾岸戦争以降、より改憲姿勢を明確にしてきたのだが、憲法改正には両院で2/3以上の賛成が必要であり、古くから憲法改正を志向してきた議員ほどそう簡単なものではないと理解している。
改憲勢力も自民党が2/3の議席を獲得できるとは考えておらず、護憲政党の社会党を第2党を引きずり下ろし、保守二大政党という政界構造とし、与野党合意の上で改憲を狙うというのが既定路線とされてきた。90年代後半から新進党、民主党等が第2党となり、改憲派議員が多くを占める状態が出来上がり、しめしめそろそろという期待感が出来上がっていたのである。
安倍総理の「憲法改正を参院選の争点」というのは、既定路線に水を挿すものであった。森元総理が安倍総理にこの点で苦言を呈したのもそうした背景のものだ。選挙の争点となると民主党は自民党と差別化することを優先し、自民党との違いをより強調する方向に出るであろう。公明党も「与党内で早急な改憲にストップをかけるのが我々の役目」といったような存在アピールをするであろう。
また困ったのが安倍支持派の若手のタカ派議員である。彼らは舛添要一議員が中心となってまとめた自民党の憲法改正草案を「戦後民主主義の残り香がする。生ぬるい」といって超党派の「新憲法制定促進委員会準備会」を発足させ、更に保守的な憲法改正を目指す動きをしている。最近の保守系議員は保守主義が国民の間で支持されているという根拠のない過信が強すぎる。こんなことをしていたら、可能性のあるものもなくなってしまうであろう。
5/10のNHK日曜討論で大嶽秀夫同志社女子大学教授が安倍政権に対し、「国民の合意ができつつある中で改憲に水を注すようなより右翼的なものを出してかえって警戒されるような事をするのは戦略がない」と両断。現実派が観念的右派の理想主義に苛立っている様子がよくわかる。民主党の枝野幸男議員は安倍総理を「究極の護憲派」だと皮肉っていた。
なんちゃって保守論客のスポーツジャーナリストの西村幸祐は世論が憲法改正容認している一方、憲法9条が支持されている現状を冷静に分析し、改憲派の稚拙さを嘆いている。
http://www.japancm.com/sekitei/sikisha/2007/sikisha23.html
- 安倍のお陰で改憲が遠のく?
http://mewrun7.exblog.jp/5624605
こちらは、私と同様、安倍政権で自民党と民主党の協調による改憲作業の可能性がなくなったことで改憲が遠のいたという分析。
憲法改正を参院選の争点にするのは大いに結構ではないか。そうすれば改憲といっても集団的自衛権の問題、日米軍事同盟への信頼など実は議論が尽くされておらず、自称改憲派の中の意見も実はバラバラだということが露呈するだけである。安倍総理の拙速さが我々に冷静に憲法を考える猶予を与えたくれたのかも知れない。