日本に二大政党制が馴染まないか?

日経BPのコロンビア大学ジェラルド・カーティス教授の記事を注意深く読んでみた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070601/126200/
 日本に二大政党制が馴染まないか? どちらかと言われれば、私も同意する。
ただ今すぐ多党化が進むのがよいのかは微妙である。
 もし小選挙区制度を廃して多党化が進めば、以下のようなことが考えられる。

  • メリット

 -自公関係の分離(選挙協力の必要性が低下)、多様な政権の組み合わせが期待できる。

  • デメリット

 -極右政党の台頭*1
 -公明党の恒久与党化の可能性(いずれの政党が第1党になっても必ず連立に入る可能性)
 -自民党の恒久与党化の可能性(1大政党+小政党となった場合)
  あるときは単独政権、選挙に負ければ連立を組み、常に与党であり続ける可能性


 同意するといいながらデメリットばかり思いついてしまう。メリットもいろいろあるはずなのだが、パッと思い浮かばない。
 選挙制度がどうあれ、基本政策を基準に政党が終結しなければ、むりやりトリビアな対立軸を作ったり、理念でなく手法を巡って対立するなど“政治ごっこ”がどうしても起こる。
 80年代後半から、イデオロギーでなく、どの政党がよりよい政策や法案を作るかという政策争いの政治にしなければダメだという議論もあった。一見理想的だが、法案の文面争いをしても意味がなく、結果的にイデオロギーがないと政治にならない。それに、法案のほとんどを官僚が作成する日本の政治風土においては、政策立案能力では与党が圧倒的有利になり、政策争いというのは理想論である。アメリカのように政党が独立して機能できるシンクタンクを抱え、議員も十分な政策スタッフを抱えてはじめて可能な話である。
 この時代、小選挙区制度導入が是と言われた背景をもう少し深く掘り下げたい。この改革を最も望んでいたのはアメリカと財界であった。彼らは中曽根時代に新自由主義にハンドルを切った自民党を応援しながらも、農村を基盤とすることから、利益配分主義、保護主義を捨てきれず、またことあることにスキャンダルが起き、その度に国民向けの人気取り政策で支持率を維持しなければならないような自民党政治に辟易していた。彼らは、もう一つの保守政党自民党と対立させ、二つの保守政党に改革競争をやらせることによって、日本の政治改革が一気に進むことを望んだ。保守改革派政党が自民党から政権を奪っても、保守改革政党の存在が自民党にプレッシャーを与え、改革を促す形でも、実はどちらでもよかった。結局、後者の形でアメリカと財界が満足する形が現在出来上がったのが現状である。
 90年代中盤から現在までの小選挙区、二大政党化の時代は、日本国民を改革熱に巻き込み、日本のネオリベラライズの歴史であった。新進党民主党も日本のネオリベラライズ及び自民党の変質に十分貢献してきたのであるが、小泉時代以降、自民党新自由主義独裁を完成されると、財界やアメリカにとって保守第二党は用なしになり、民主党自民党との差別化をはかるためにややリベラルな方向に舵を切ったのが現状である。
 結局日本で胎動したにわか二大政党制というのは、アメリカや財界のために機能してきたのである。ちょうど片方が用なしになったのはいい機会である。日本国民にとって二大政党制がいいのか、他党多極がいいのか考え直す時期ではないか。

*1:一部、メリットだと言う人もいるであろう