宮崎哲弥 安倍政治を評価

 私は1ヶ月程前に「強行採決すらポジティブに評価される時代」id:kechack:20070525 というエントリーを書いたが、ちょっとタイミングが悪かったなと自嘲していた。
 その頃には、さすがに安倍内閣のイケイケ路線を評価する人が漸減していたからである。
 ところがまだ電波な評論家がいた。宮崎哲弥である。

昨日の朝日新聞の耕論「安倍政治を点検する」という企画記事で、彼はこう言っている。
純粋に安倍内閣がやってきたことだけを見れば、これ程失点の少ない政権はない、とも言えるのではないか。改憲というタブーに切り込む国民投票法案をはじめ、内容について賛否はあるにせよ、短い期間に数多くの重要法案を成立させた。外交面でも、靖国問題を封印して中国、韓国との関係を劇的に改善し、アジア太平洋地域でのゆるやかな経済統合にも道筋をつけた。従軍慰安婦問題で米議会を刺激する不手際な発言をしたのが唯一の例外だ。皮肉なことになるかも知れないが、後になって振り返ってみると、評価の方が高くなるに違いない。

 この後も安倍マンセーは続くのだが、面倒なので割愛する。
 まず法案の内容や質はともかく、成立させた数で評価するのはナンセンスである。政治においてまず重要なのはベクトルをどちらの方向に向けるか、次にベクトルの絶対値である。絶対値の大きさだけを評価するのは危険だ。変な方向に大きなベクトルが向くと、修正不可能になる。
 そもそもそれを可能にしたのは、小泉時代郵政選挙での圧倒的議席数と、小泉時代自民党内反主流派粛清による権力集中の恩恵を受けているからである。別に安倍氏の英知によるものではない。
 今は、圧倒的多数与党と非主流派が死んで独裁化した自民党の弊害の方が目立っているのに、まだこんな戯けたことを言っている。それ以前の問題として、現役閣僚が自殺しておいて「これ程失点の少ない政権はない」はあり得ないだろう。むしろ戦後最も多難な内閣であったと言われる可能性の方がよほど高い。本当に困った御用評論家である。

参考

 さっそく正論編集長の大島信三氏が宮崎哲弥氏の論説を評価している。
http://oshimas.iza.ne.jp/blog/entry/217328/