マニフェスト以前に、日本の政治はまだまだ議論が足りない。

 昨日の21世紀臨調主催の党首討論を見た。自民党民主党の党首のみの参加ではあったが、マニフェストを叩き台に討論し合うという趣旨は非常に画期的であり興味深かった。

 マニフェスト選挙は政策を競うものであるが、政策というのは基本的思想が異なり、完全に対立するものもある

が、実は問題認識も解決の方向性も似ていて、細かい方法論を競い合っているだけのもの方が多い。はっきり言って自民党民主党は党の体質が似ているので、水と油で対立する問題はほとんどなく、方法論争いがほとんどである。

 私は最近自民党の法案の問題指摘ばかりしているが、実際に自民党案が良くて民主党案がいいと思っている訳ではない。大抵どちらにも一長一短があるのだが、議論を深めて弱点を補強し合いより理想的な法案にするようなことは起こり得ない。かつては国会審議において与野党修正協議というのが行われることも多々合ったのだが、与党の数的有利を背景に、国会がスピーディーに与党案を通す儀式と化しているのである。

 党首討論でもマスコミは政策の優劣を付けたがるが、実際にどちらが優れているという話ではない。安倍総理子供手当や高等教育の無料化、農家への戸別所得補償制度など民主党の公約は財源があいまいで実現性に乏しいと指摘した。確かに私もこれは民主党マニフェストの弱点だと思ったが、では検討に値しない課題なのかというという訳ではないと思う。

 経済的問題で高校中退する生徒が増加している問題をどう考えるか、本来は与党に問いたださないといけないテーマではないか?小沢一郎はいまいちディベート下手なので、問題点を指摘されただけで敗走してしまった印象だが、本来は反撃処である。恐らく落とし処は、一定の基準以下の所得者層の授業料免除ではないか?すべての公立校高校の授業料を無料化したら7兆円の財源が必要だが、何も普通に授業料を負担できる家庭の授業料まで免除する必要はない。とりあえず1兆円規模の予算で授業料免除を行い、経済的理由による高校中退を防止する。

 私は前の仕事で債権回収の仕事をしていたが、債権者に対し強制執行を行い、高校生の娘が高校中退を余儀なくされたと聞いて、今でも胸が痛む。日本では高校ぐらいは出ていなければまともな求人はない。高校は義務教育ならぬ、進学希望者は教育を受けられる権利教育にすべきだと思う。少なくとも、ニートワーキングプア、階層の固定化を防ぐ一定の施策になり得るであろう。

 どの党の政策がいいか○×だけで判断してても、本当に効果的な政策は導き出せない。マスコミやシンクタンクはもう少し各論に踏み込んで、丁寧に問題整理する必要があると思う。マスコミまでもが、シンパシーを抱く政党と対峙する政党の政策の粗捜しばかりしてしまうと、本当に不毛な議論しか起こらない。

 まだ各党のマニフェストを読んでいないので何とも言えないが、今回はどの政党のマニフェストも完成度はあまり期待できず、これだけでは投票判断にはならないであろう。むしろこれを叩き台として選挙戦の中で、議論が深まることに期待し、その議論を注視しようと思う。