田原総一朗が新手の安倍応援キャンペーンを開始

 安倍シンパであることが半ば公然化している田原総一朗が、安倍自民党苦戦に思い余ってか、安倍応援キャンペーンを開始した。それは花田紀凱ほど露骨でなく、岸井成格ほど痒いものではないが、その旗色は鮮明である。

 つまり、読者に官僚のしたたかさを強調し、それに対峙する安倍政権を応援したくなる雰囲気を醸成しようという魂胆である。しかし安倍内閣の公務員改革は総じて評価が低い。これを評価する人たちのロジックはこうだ。

  • 日本の官僚というのは明治以来とても強くて、国民は評価しなくても、安倍政権がやった公務員改革というのはすごいことなんだ。
  • 確かに抜本的な改革でないかも知れないが、一歩でも前進するのだから評価しようよ。

 田原総一朗のロジックもこの類なのだが、こういうロジックは政治のプロなら伝わるが、インパクトがないので、どう味付けても強い支持には結びつかない。
 何よりいけないのが、今回の参院選でも、自民党は業界団体や官僚の支援を期待して官僚OBを業界利益代表候補として擁立していることである。残念ながら安倍政権も自民党も、本気で官僚主導政治にストップをかけるというメッセージが伝わってこない。国民に強いメッセージを打ち出したいのであれば、候補者を入れ替えるくらいの行動が必要だ。
 小泉時代に濃い味付けの政治に国民が慣れてしまったのかも知れない。薄味の政治を旨いから食べろといっても、誰も旨いと思わないのであろう。
 田原の言い分ははっきり言って国民には届かないと思うが、大事なことも言っている。

自民党に分が悪い候補者の“玉”

さらに自民党にとって今度の選挙で分が悪いのが、候補者の“玉”の問題だ。今度の参議院選挙の候補者を眺めると、自民党の候補者の“玉”が悪い。民主党に比べると圧倒的に悪い。
前回の2001年参議院選挙は小泉前首相の支持率が一番高かった80パーセント以上頃の選挙で、当然落ちるべき候補がみんな当選してしまった。しかも、落選すべきだったのに当選してしまった議員たちは、あれから6歳年を重ねている。悪いのが年をとってさらに悪くなってしまった。
安倍首相は本当は「こんな候補はダメだ」と変えたかった。小泉前首相は非情で血も涙もないから、候補者を全部変えたかもしれない。しかし、なまじっか常識的で、小泉前首相ほど非情ではない安倍首相は、党内の大反対もあって、ついに全員変えることができなかった。
それに対して、民主党は前回自民党に大敗したので、負けた候補を全部変えた。若い新鮮な候補がそろっている。自民党は負けて当然の候補がずらりと並んでいる。この玉の違いが今度の自民党の逆風というか、安倍自民党参議院選挙の苦しさだと思う。

 一旦、古臭い政治家に落選してもらえば、もしかしたら数年後に自民党は保守改革政党として生まれ変われるかも知れない。本当に自民党に期待している人は、心を鬼にしてお灸を据えるのも選択肢ではないか?