自民党の支持率低下と矛盾した民意(郵政選挙から今日まで)

kechack2007-07-22

 小泉時代郵政選挙から、今日まで自民党の支持率低下は二つの作用が潮流としてある。一つはネオリベラリズム支持の低下、もう一つが「古い自民党」の解体である。
 郵政選挙は決して小泉改革の勝利ではない。あの時は改革を支持する主に都市部の有権者と農村部の旧来の自民党支持層の二つの対立した民意が一つの政党への得票となり296議席という結果をもたらした。この対立した民意の支持を繋ぎ止め続けるのが困難であることは、自民党の議員の多くも理解しており、それで森元総理はポスト小泉に安倍総理は手を上げることに難色を示していたのである。常識的に次の選挙は負けるとがわかっていたからである。
 既に小泉政権末期には、新自由主義への国民の期待は瓦解しつつあった。ホリエモンという時代の寵児が逮捕され、耐震偽装事件など企業の利益至上主義、モラル低下に対し厳しい視線が注がれるようになった。当初新自由主義保守主義の新しい形として支持してきた古くからの保守主義者が離反していった。
 安倍政権となり、古い保守主義に理解を示し、郵政造反組の復党を認める等軌道修正が行われたが、逆に根強い改革支持派が離反を招いた。同時に郵政選挙の時に、別に小泉改革を支持したのではなく慣習的に自民党支持を続けてきた農村部の保守層の離反が同時に起こったのである。結局、安倍内閣はどっちつかずで、小泉時代の矛盾した支持層の両方を漸減させてしまったのである。
 一方、民主党小沢一郎という曲者が党首となり、「一人区行脚」という寝技を始めた。これは、農村部に自民党政治の矛盾を気付かせる作戦で、今考えれば非常に効果があったのであろう。また民主党は元々は改革政党と認識されていたのだが、小泉時代にすっかり自民党にお株を奪われてしまっていた。昔程ではないが、改革志向の有権者も若干は戻ってきたのであろう。3年前の参院選は、小泉内閣の支持率が高いにも関わらず民主党が勝った。この時は自民党参議院の候補者のタマが悪すぎて、民主党候補の方が熱心に改革を訴えていたので、小泉政治を支持する層が民主党候補に投票する傾向がかなり見られた。民主党は支持者は再配分志向、リベラル派が多いが、議員は元々松下政経塾出身者や自由党系など元々は新自由主義者が多い。小泉来の根強い改革支持者も3年前の選挙のように民主党に流れる可能性が高い。候補者も東京選挙区などはしたたかに改革支持者向け候補と再配分重視支持者向けの候補を用意している。仮に今度の参院選民主党が勝ったとすると、今度は民主党が矛盾した民意を抱えることになる。
 「矛盾した民意」と言ったが、これに対する落とし前については政治的なセオリーがある。実は安倍晋三*1小沢一郎も似た考えを持っていると思っている。二人ともこの選挙の演説で「セーフティーネット」という言葉を使っている。この言葉を使う人の考えは決まっている。あくまでも新自由主義的な小さな政府を基本にして、その中で敗者の痛みを和らげる社民主義的な制度を補完的に導入する。いわゆるブレア時代の英国労働党の政策が眼中にあるのであろう。これができた政党が時期衆院選を制し、比較的長期政権を狙える可能性がある。

*1:ただ、安倍総理はわかっているかいないのか、実政治ではセーフティーネットらしきものは構築せず、けっこう財界やバリバリの新自由主義者の学者の言うことを聞いて、剥き出しの新自由主義を継続してしまった