誰が安倍内閣を潰したのか?

 自民党を強く支持しているグループに以下の3つのグループがある。

 自民党の支持基盤は中曽根時代にこの3グループにほぼ色分けされるようになり、なんとなく共通の利害を見出しながら共存を続けた。私は「保守が一枚岩でなくなる。かならず利害が分離する。」と主張続し、そのような指摘も一部では為されてきたが、保守論壇はこのような意見に対し「保守勢力を分断する左翼の陰謀」と反論し、保守論壇は3者が共存*1していた。今や、この3者の利害離反は明らかで、どのグループに足場を置くかが重要な路線問題となってきている。
 小泉政権末期に古典的保守が離脱し、小泉政権末期は支持率も低迷した。ところが安倍政権発足直後は古典的保守も小泉政治の修正を期待し、この3者が押しなべて安倍内閣を支持し、70%近い支持率を誇ったのである。
 この高い支持率に調子に乗って、この3つのグループは自分たちの主張をより強く政治に反映させようと跋扈したのである。新自由主義グループは「ホワイトカラーエグゼンプション」や企業減税を求め、政治右派は憲法教育基本法の改正を求め、古典的保守は優勢造反組の復党を求めた。
 しかし、それらはどれも国民の求めるものではなく、いずれの政策も支持率低下を招いた。政治というのは、より極端な主張をするグループほど熱心に支持し、政治の影響力が強い。しかし、極端な政策ほど世論から離反しており、支持率を下げる要因であるというパラドックスを抱えている。そんな基本的なセオリーも知らずに、安倍ははいはいと言うことを聞いてしまった。
 調子に乗った取り巻き連中も悪いが、安請け合いする安倍もバカだったのだ。

政治右派悪玉説をどう読むか。

 愛知和男議員の元政策秘書政治学者の雪斎氏が政治右派を痛烈に批判している。彼はどちらかと言うと構造改革支持の新自由主義者で、私に言わせれば「お前らも同罪だ!」なのだが、面白いので要約する。

 福田総裁支持のの展開には、保守論壇方面は歯軋りしていることであろう。だが、そうした保守論壇方面の言う事など、無視すればよろしい。安倍総理の執政を頓挫させたのは保守論壇方面にも責任があるということを自覚しない御仁達には、救いはない。
 安倍総理は、自分の保守「イデオロギー」に引っ張られすぎた。「お友達内閣」といっても、自分の保守「イデオロギー」に近い人々だけを重用したというのが、実態であった。
 今度こそ、「イデオロギー・フリー」の重厚な統治を観たいものである。
http://sessai.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_3a78.html

 彼は保守イデオロギーこそ悪玉としているが、現実的には「優勢造反組復活」や「企業減税」「ホワエグ」が直接的支持率低下になっているが、「教育基本法改正」や「憲法改正のための国民投票」等の問題は支持率低下にはなっていないのである。保守イデオロギーは別に国民の懐が痛む訳でもないので、最初から自民党を支持してない左派が文句を言うだけで、内閣支持率では影響ないし、むしろ「安倍カラーを出せば支持率が上がる」という分析さえあった。
 でもそこが落とし穴であった。安倍氏が取り巻きの保守論客の「安倍カラーを出せば支持率が上がる」という考えをベタに信用してしまったのである。多くの国民は保守イデオロギーを直接拒絶したというより、そればかりにうつつを抜かして、国民生活に直結する課題に不熱心な安倍氏に愛想を尽かしたのである。年金問題がその象徴で、安倍氏の頭はイデオロギーでいっぱいで、年金問題などどうでもいい問題であった。
 その意味で、参院選中ずっと「天下国家の課題である憲法や安全保障を語れ、年金や政治とカネの問題はくだらない」*2といった主張を垂れ流してきた産経や読売などの保守系新聞は罪深く、安倍総理の判断を誤らせたA級戦犯とも言える。
 ただ、保守イデオロギーは直接的な拒絶を生むと訳ではないので、非常にバランス感覚に優れたリーダーの下では、今後も保守イデオロギー復権する可能性があることは再度指摘しておきたい。

3本柱では自民党の明日はない

 実は新自由主義も政治右派も古い自民党も、国民の支持を失っている。次期総理は福田という流れで、彼は新自由主義については修正、政治右派は否定、古典的保守には理解という感じなりそうだ。だが、中曽根政権来自民党の屋台骨を支えてきた3グループとも、既に国民の支持を得られないことが明白となった。自民党は新たな柱を建てることをしない限り延命はもうないと見たほうがいい。福田首相が、古い3本柱の呪縛から開放されて新たな柱を建てられるか、お手並みを拝見したいところだ。

*1:ここ数年「古典的保守が離脱

*2:参考:産経新聞 7/16主張憲法 臆せず国の根幹語る場に』
7/20正論憲法問題こそ参院選の焦点 年金選挙への疑問』
7/20主張参院選 外交・安保 国益と安全を託せるのは 』