経団連御手洗会長の「基礎年金税方式」発言の打算

 日本経団連御手洗冨士夫会長は20日の記者会見で、基礎年金の財源について「私は税金でやった方がいいと思う。社会保障と税制を一体改革すべきだ」と述べ、全額税方式が望ましいとする考えを明らかにした。自民党の総裁選で、こうした年金制度の抜本改革を議論するよう求めた。基礎年金の税方式は、民主党が主張している。
 経団連は、年金抜本改革が議論された04年には、基礎年金の財源として「税方式」を提言。だが、基礎年金の国庫負担割合を09年度までに3分の1から2分の1に引き上げることが決まったことを踏まえ、税方式に関する主張を控えてきた。
 基礎年金を税方式にした場合の財源について、御手洗会長は「徹底的な歳出カットを前提に、消費税で賄えばいいのではないか」と語った。 9/21朝日

 経団連の御手洗会長が民主党に秋波を送ったような見方もある。民主党は「徹底的な財源カットをまずやり、消費税の議論はそれからだ」というニュアンスで温度が違うが主張は似ている。ただ御手洗氏の狙いは別のところにあると見た方がいい。経団連のゴールはあくまでも法人税の税率を下げさせることになる。御手洗氏の言うところの「税制の抜本的見直し」というのは「消費税率を上げ、その財源を法人税減税に充てる」のが主眼だ
 ただ御手洗氏はあまりにも直球勝負し過ぎた。ネオリベ丸出しの自己主張を包み隠さず行い、安倍政権にも直球で政策提言を行い、政治献金を担保に企業減税などの政策を飲ませた。御手洗氏は郵政選挙から安倍内閣発足当初の高支持率を見て、日本国民に広く新自由主義が浸透し支持されているという勘違いをしてしまったのである。
 安倍内閣を潰した戦犯の一人が御手洗氏である。恐らく本人にもその自覚くらいはあるであろう。企業減税ホワエグ等財界エゴ丸出しの政策を打ち出し、それに理解を示す自民党という構図が浮き彫りになる中で内閣支持率は下がり続けた。
 私は御手洗氏は変化球投手に転向したのだと思う。とにかく安倍内閣崩壊で法人税減税前提の消費税アップの議論は絶望になった。ただ何とか挽回するには、国民世論を利用するしかないと考えたのであろう。年金財源の安定化のための消費税率アップというロジックであれば、国民の支持も得やすいし、そもそもの民主党の落しどころであるから政治的決着も見やすい。
 消費税アップで確保された財源のうち7割を基礎年金財源に充て、3割でも法人税減税の財源の確保に勝ち取れれば御の字という皮算用ではないか。世論の支持をどう得るかが課題だが、日経新聞などに「産業の空洞化」や「国際競争力低下」といった問題を煽ってもらえばなんとかなるであろう