道路特定財源の一般化まとめ

政府の道路特定財源に対する方針(経緯)

 道路特定財源一般財源化の問題は、小泉政権来の課題であるが、賛成派・反対派の攻防が続き、未だに膠着状態である。小泉元総理は郵政民営化問題に注力した余りこの問題は先送りにし、安倍内閣閣議決定した『骨太の方針06』においては「道路歳出を上回る税収」を道路目的以外に使用とする一般財源化を打ち出した。
 しかし、これも必要な道路とは何かという議論抜きの決定であり、道路建設が必要だという判断が為される内は、道路建設は続けられるシロモノであった。

 福田総理は一般財源化に関して終始消極的な姿勢を示している。基本的に安倍内閣時代の閣議決定を堅持するとしているが、昨年の閣議決定自体が妥協の産物であり、道路を作り続ける余地を残したものであるから、規定路線であった。また自民党特有の「間違った選挙総括」で、「地方重視のために道路を作らなければならない」という勢いは増すばかりだ。

 国土交通省が先ほど発表した道路整備中期計画も、安倍内閣時代の方針が最初から骨抜きで、福田内閣においてそれを明確に打ち出したものだ。構造改革派やマスコミは批判のトーンを強めているが、そもそも期待するだけ無駄だと思う。

二者択一でない、三つ巴の様相

 これまで、道路特定財源一般財源化に賛成か否かという二者択一の話をしてきた。確かに政府与党内や新聞などの議論は二者択一だが、もう一つ有力な主張がある。それは「税率引き下げ」だ。特に揮発油税暫定税率を引き下げるべきという主張は、租税特別措置法の期限が2010年3月までであることも相まって勢いを増している。
 新聞は読売から朝日まで、一般財源化賛成の論調だが、テレビを中心に「そもそもガソリン税が高すぎる」といった論調が目立つ。自民党応援団として知られるみのもんたテリー伊藤自民党内では議論すらされていない「税率引き下げ支持」の発言をしているのが面白い。
 民主党揮発油税暫定税率は撤廃してガソリン価格を引き下げるべきと主張する一方、残った道路特定財源は地方の自主性に任せるとしている。道路を作りたい地域は作ればいいし、他の使い道を求める自治体は他に回せばいいという話だ。

 民主党の政策に強い影響を与える自動車労連は、基本的に道路建設を促進させる立場から道路特定財源一般財源化に反対している。
http://www.jaw.or.jp/rep/rep2_5.html
 しかし、カーユーザーが求めているのは道路建設促進よりガソリン価格の引き下げであり、方針変更もあり得る出あろう。

財界の態度

 財界は概ね道路特定財源の一般化には反対である。普段は財界と利害が共通する自民党構造改革派や財政再建派とはここでは意見が対立する。財界におけるゼネコンの発言力が低下し、財界も脱土建政治構造改革推進派に転じたと思われていたが、この問題に関しては違うようだ。 

 「都市と比べてガソリン使用量が多い地方に犠牲が出るととられかねない。」確かにガソリン税は所得の低い地方都市住民が重税を負担する典型的逆進税制というのは本当なのだが、普段は金持減税貧乏人重税マンセー経団連が、都合のいい時にいい人ぶるのは腹立たしい。

環境重視派・福祉重視派

 環境重視派は自動車交通を敵視するものであり、炭素税などを導入してガソリンに対して今より更に高い税を賦課すべきと主張する人もいる。環境政策という面では間違っていないのではあるが、地方ほどマイカー依存が高い。実際に所得水準の低い地方在住者が思い租税を負担するという矛盾も考えないといけないであろう。社民党などはガソリン税を総合交通税にして、地方の公共輸送機関の維持に使用すべきと主張している。

 共産党道路特定財源一般財源化して福祉や年金に振り分けるべきだと主張している。
 民主党にも環境を重視する議員は多いのだが、民主党の自動車族と呼ばれる旧民社党系議員が多く、「高速道の無料化」とかマイカー族に優しい政策を出してきて環境重視派を失望させることも多い。環境に関しては社民党の主張が一番明白である。
面白いことに、自民党構造改革派や財政再建*1は、この問題では普段は理解を示す財界にそっぽを向かれている一方、普段は全く利害の一致をみない社民党共産党と利害が一致する。もちろん入り口を共有するだけで、出口は全く逆の場所にあることはわかりきっているのではあるが…
 

  一般財源化派*2 維持派 税率引下派
政治 自民党(構造改革派)
自民党(財政再建派)
民主党*3
社民党
共産党
国土交通省
自民党(地方重視派)
公明党
国民新党
民主党*4
マスコミ 全国紙 地方紙 テレビ
  経済評論家の多く 財界
自動車労連
 
一般世論 構造改革支持派
財政再建支持派
環境重視派
地方活性派 生活重視派

*1:両者は利害を同一にすることが多いが、増税への肯定で利害が対立するので敢えて分けた

*2:使途拡大派を含む

*3:税率引下と折衷

*4:一般財源化と折衷