なぜ若者は新自由主義を支持したのか?

 今後、何回かに分けて、新自由主義を信奉した過去を持つ一人として、自分の体験を含めて、新自由主義が魅惑的なイデオロギーとして支持されていた90年代を紐解きたい。
 私が最も新自由主義に熱狂していたのは、私がまだ新入社員であった90年代前半だ。まさに宮沢政権が崩壊し、非自民連立政権が樹立した時代である。
 私が入社した会社は、比較的社員を大事にする会社で、ベテラン社員がのんびり働いていた。しかも出生が遅く、少し上の先輩がまだ倉庫番や配送という下積みをやらされ、30過ぎの大先輩も部下のいない一兵卒であった。
 当時はバブルが崩壊し、就職難で苦しむ同期が多かったが、当時興隆していた流通業に進む同期が多くいた。彼らは入社1年で多くのアルバイトを指導するマネージャーに昇進し、数年で店長を任される同期もいた。
 私は長期間下積みをやらせる自分の会社がやるせなかった。自分のやっている仕事ははっきりいって、アルバイトでもできる内容だと思った。自分の会社は「アルバイトには現金を触らせない」という不文率があり、アルバイトの採用は極めて限定的であり、かなりの単純作業まで正社員が担っていたのである。
 私は思ったのである。単純作業をアルバイトに置き換えれば、我々は短期間でもっとレベルの高い仕事をやらせてもらえるはずだ。私は単純作業をアルバイトに置き換える当時時流の経営を熱烈に支持し、会社のレポートには「当社にも人事革命が必要です!」と書き綴ったのであった。