今年を振り返る。〜政治保守と経済保守の利害対立が決定的となった〜

 昨年の12月31日にエントリーで、私はこんなことを書いた。

経済保守と文化保守の利害が対立し、新たな潮流が生まれるという私の予想は今年もハズれた。id:kechack:20061231

昨年末は郵政造反組復党問題で若干の陰りは見せていたものの、安倍内閣が高い支持率を維持していた。小泉政権末期に起きた新興企業家による不祥事や格差の拡大により、経済保守と政治的保守の利害対立が決定的になったと見えたが、小泉政権から新自由主義的改革路線を継承しながら独自の保守思想を保持した安倍内閣が発足したことにより、再び経済保守と政治的保守が包括されたようにも見えた。
 ところが、それは完全な錯覚であった。既に経済保守と政治的保守の利害対立が決定的になっており、80年代後半の中曽根政権来の経済保守と政治保守の融合という冷戦末期の状況で思考停止している安倍晋三は、何の躊躇もなく経済保守主義と政治的保守主義を相乗させる政治を行った。今考えれば、これこそ安倍政治の失敗の元凶であった。
 経済保守の立場を取り、政治的保守主義とは富田日記の例のように対立する姿勢を見せる日経新聞は、昨今の改革後退に関して12月24日の論説で「だれが改革を損ねたか。福田康夫よりも安倍晋三の責任が重い。市場志向と保守主義者の2つの流れを融合できず、股裂きにあい、虻蜂取らずとなったからだ。 」と断言している。
 私が、経済保守と政治保守の利害の対立が決定的になると断言したのは一昨年の年末であるが、ようやく多くの人がこの事実を認識するようになった今日では、もはや包括するのが不可能なまで分離してしまっている。昨今は政治的には保守だが、反新自由主義、反財界の立場を取るブロガーが非常に増えている。
 左翼から見れば、保守主義の多様化&拡大であり、益々左翼の領土が狭くなったという危機感もありようだが、保守主義の多様化は政治保守と経済保守がお互いに共通利害を見出すことが困難な程分離しており、政治的課題によっては、お互いに左翼と共闘した方がいい場合すら多く見られるようになった。既に反新自由主義の立場で政治的保守色の強い国民新党社民党が共闘したり、日中友好という面では経済保守と左翼が共鳴し政治保守と対立関係にあったりする。
 これは突き詰めれば自民党という政党の限界にも直結する。中曽根政権から小泉政権まで、経済保守と政治保守の共通利害を見出すことによって政権を維持してきたが、小泉政権でとうとう限界点に突き当たってしまった。惑星は死ぬ寸前に大きなエネルギーを放つといわれているが、今考えれば郵政選挙がそれに当たるのではないか。もちろん、民主党とて左翼と経済保守と政治保守の3面性を有しており、仮に政権を得た場合も自民党と同じ問題に直面する可能性がある。