日刊工業新聞の社説を読んだか!

 昨日のエントリーで「株価下落でネオリベラリストの舌の根が再び湿りだした」ことに言及した。日経や産経に目を奪われていたが、日刊工業新聞の社説が飛び抜けて酷かった。
 これを読んで、最初は15年前の古新聞を間違って読んだのかと噴飯した。しだいに読んでて怒りにかわり、最後は経済オンチ振りに閉口した。この紙の社説はWebには掲載されていないので、引用させていただく。特に解説はしないので、ぜひ読んで感想を聞かせて欲しい。

社説 株価下落が止まらない 構造改革の本道に立ち返れ 1/22日刊工業

株価の下落が止まらない。世界同時株安は仕方ないが、海外に比べて東京市場の下落率が大きいことは日本経済の置かれた不安定な状況を物語る。少なくとも今回の景気回復局面で、企業業績回復が示したはずの景気回復が磐石の上にあるわけでないことが明白になった。
 この局面で国民は何を望むのか。所得を再分配して格差を是正し、弱者を救済して皆で苦労を分かち合うことか。それとも明日の成長に向けて経済構造改革を推進し、改めて“痛み”を受け入れることか。産業社会の声なき声が後者であることを信じたい。
 殷鑑遠からず。そんなに昔のことではない。わずか5年前の冬を思い出せばいい。日本経済は今よりはるかに困難な出口の見えない状態の中で、らせん階段を下がるように沈み続けていた。政府の数度の株価対策も効き目がなく、日経平均株価が8000円を割りこんだのは03年3月のことだ。
 その当時もさまざまな議論はあった。大規模な財政出動を期待する声や個人消費を増やすために賃上げを求める声も聞かれた。しかし、日本経済を破綻から救ったのは、時の小泉純一郎内閣が断固として構造改革に着手したことだった。
 実際にはその改革は、ほんの一部しか手が着いていない。しかし、それだけで日本経済は目に見えて浮揚し、株価は回復した。構造改革によって経済を立て直すという遠回りに見える道が実は正道であったことを証明している。その道はまだ歩き始めたばかりだったはずだ。
 にもかかわらず、改革のわずかな果実を再配分に向けさせた「格差是正論」とは何だろうか。再配分だけでは経済はせい成長し得ない。経済構造改革とは誰かの不当な利益を奪って他に還元することでなく、長く続いてきた仕組みを壊して効率化することだ。国民の多くが痛みを受け、何かを失い、そして別の果実を得る。しかも単純平等ではなく努力した人に大きな果実が渡る。中には果実が得られない人もいる。大げさに言えば弱肉強食の社会再編成である。
 日本が世界経済の一員である以上、果実だけを得る空想的な社会はあり得ない。株式に限って言えば、極東の一市場にすぎない日本に魅力がなくなれば世界の資金は集まらない。その状況が続けば、日本経済は行き詰まる。それは投資家だけの問題にとどまらないことは改めて言うまでもないだろう。
 あえて政府が格差に目配りをすることの必要性を否定はするまい。しかしそれは改革の推進と対立する概念ではない。株価対策に特効薬はないが、処方箋はすでに出来ている。政府は構造改革の本道に立ち返り、加速する決意を示すべきだ。