道路討論を見て

 東国原知事はただのタレント知事ではない、よく勉強していると褒めている人も散見されるが、この討論では東国原知事の「逃げ」が目立ち、私には及第点とは思えなかった。テレビではごく一部しか放映されていない。中身を全部見たい人は、産経新聞のWebサイトに全文掲載されているので見て欲しい。
 東国原知事は、民主党菅直人代表代行が論点の核心に踏み込もうとすると、「相手ペースに乗せられる」という危機感を察してか、かなり強引な論点そらしを行う姿が目立った。もちろん菅直人にしても、相手をまんまと自分ペースに乗せられなかった点ではもっと工夫の余地はあったと思うが。
 どのように論点をぞらしていたか、具体例を挙げたい。

「どういう街づくりなり、どういう地域があったときに活性化するかという議論と、単純に道路ができれば活性化するかしないかというのとはちょっと違うと思うもんですから、もし広げてよければ地域活性化についてそれぞれご意見があるあらば、内容を開陳していただければと思います」

  • 東国原

 「地域活性化もそうなんですが、まず道路というのは重複しますけども、救急医療のときに、例えば2次救急、3次救急が本県の場合は1件で70分以上かかるんですね。これが菅さんも行かれたと思いますけども、宮崎から都城の間、269号を行かれると、高速行くのとでは18分のぐらいの差は都城市役所から宮崎市役所に行ける。18分とおっしゃいますけど、ものすごく大きいんですよ。これで重篤患者とか、そういった方たちが何人助かるかという話なんですね。」



 せっかく街づくり地域活性化の話で中身が深まるかと思ったが、いきなり話を変えてしまった東国原知事

 そして地域の活性化なんですけども、例えば観光。ストロー現象とおっしゃいましたけども、そういうことを言う方が一部おられます。宮崎県に特化した話ですけども、宮崎県の場合は、熊本から鹿児島、あるいは大分あたりから観光に来たいとおっしゃるんですね。今度、台湾線も定期便化されます。ソウルも増便されます。そういった方が県内に入ったときに、宮崎から入ったときに鹿児島に抜けたい、熊本に抜けたい、大分から出たいといったときに道路事情が、インフラがあまりにも劣悪であるゆえ、ツアーの予定を組めないとおっしゃるんですね。そういう方々が多いですよ」



道路のストロー効果についての議論は重要なのだが、東国原は強引に話題を変えた。菅直人も追求せず。
 ただツアーの話はどうなのか?観光バスで急ぎ足で宮崎を駆け抜ける観光客を増やすことが、宮崎経済の活性化になるとは到底思えないが。東国原知事は宮崎の観光活性化のために一所懸命頑張っているのはわかるけど、走り回ってばかりいないで、一度ゆっくり県内を歩いて、もう一度故郷のよさを味わった方がいいと思う。そうしたら、高速道路で宮崎を駆け抜ける観光客に来て欲しいなんて気持ちは起きないはずだ。

「非常に大事なことは、美しいという情景ですね。きれいであると。その中にやはりそれぞれの地域の伝統文化とか、あるいは都市に出て、いろいろな文化に親しめる余地があるというような条件をつくっていく必要があります。そういうような条件を同時に満たそうとしました場合に核になるのは、やはり道路なんですよ。ということなんですね。地域振興というのは非常に抽象的なもんじゃありません」



 やっと地域振興の話に入るかと思いきや、よくわからないお話。国土交通省が建設しているバイパスは景観テロリズムの極北だ。日本の地方都市のバイパス沿いの光景ほど、日本の美しさを破壊しているものはない。私が道路特定財源廃止を支持する理由の一つが、「バイパス」という名の景観テロに歯止めをかけることができるからだ。私は宮崎県内のバイパス沿いの景観写真を東国原知事に見せて、それを美しいと思うか詰問したい。