なぜ暫定税率廃止で福祉や介護に影響が出るのか?

 道路特定財源に関する暫定税率が失効し、各自治体の道路建設事業が相次いでストップしている。建設業者にとっては死活問題の話ではあるが、本当に必要な道路は何か冷静に考えるいい機会と捉えることもできる。
 この非常事態で、各自治体首長の手腕も問われる。歳出が限られたときに、このリーダーはどのような優先順位をつけるかという哲学が試される面もある。将来地方自治が拡大し、地方のことは地方で決められるようになっても、平気に福祉・医療・教育などの予算を削って道路建設を優先する首長が現われ、今より酷いことになるとも限らない。今は、地方自治の実力を測る機会でもある。
 多くの自治体では道路工事をストップさせているが、中には道路以外の予算を凍結する自治体もある。仙台市梅原克彦市長は1日の記者会見で、道路だけでなく、公園整備や学校の改修などすべての公共工事の発注を凍結する方針を明らかにした。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news/20080402-OYT8T00028.htm
 宮城県の村井知事は、新規道路事業をすべて凍結する方針を示した上で、「県債の返済が最優先。私学への運営費や病院事業への補助金などは大幅にカットせざるを得ない」と語っている。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news/20080401-OYT8T00089.htm
 福岡県の麻生知事は、独り暮らしの高齢者の見守り活動を支援するための事業費約2270万円を凍結すると発表した。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukuoka/news/20080401-OYT8T00737.htm
 暫定税率道路特定財源のはずなのに、なぜ道路以外の予算に影響を及ぼすのか、一般の人には全くもって理解できないであろう。結論を言えば、地方自治体は地方債を起債して、先に工事を行い、後から国の交付金で返済しているので、新規の道路工事を中断しても歳入が足りず、他の予算を削って償還に回さなければならないのだ。
 ただ福岡県の麻生知事のやり方はちょっと酷いと思う。「ひとり暮らし高齢者等見守り事業」の予算など他の予算の遣り繰りでどうにでもなる予算規模であり、わざと期待度が高く国民生活に直結した予算を凍結することによってプロパガンダ効果を狙っているとしか思えない。麻生知事は民主党を政局優先と批判しているが、麻生知事のやり方自体が予算を政治的駆け引きに利用した政局であり、謗りを受けるべきである。麻生知事は混乱を民主党のせいにする政治的駆け引きに完全に与しているが、非常時に自治体首長の手腕も厳しく問われていることを忘れている。
 読売新聞の報道も余りに恣意的である。読売新聞自身が完全に混乱を民主党のせいにする政治的駆け引きに参加してしまい、全く公平性を担保していない。
 しまいには、「税金の不足分が、福祉や介護にしわ寄せが来るようだと、手放しで喜べない。国民に大きな不安を与えるような政治ではダメだ」という取ってつけた意見を紹介。
 http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_08040252.htm
 ここまで来ると、全国知事会ナベツネが裏で握手してシナリオを書いていると穿ってしまうのであるが…。