新聞社の敗北

 私も反省しなければならない、新聞社の論説はもう少し世論に影響力があると思っていた。
それで暫定税率失効当日に「ガソリン杯は福田・財務省連合の勝利か?」というエントリーを書いたが、見事に外してしまった。
 また新聞記者や評論家の間には、暫定税率廃止が愚で一般財源化こそ是という空気が、相当前からあって、いわゆる政治のプロの間では「これが正解」みたいなコンセンサスが既に出来上がっていた。民主党がガソリン値下げ隊を結成した時に、これを馬鹿にするような論調が出たのもそのためである。
 民主党は本則分を一般財源化し暫定税率は廃止という折衷案を出してきたが、新聞は道路を作り続ける政府案よりはマシだと一定の理解を示していたが、より前者をメインにすべきと民主党に苦言を呈していたのである。実際に世論もけっこうガソリン値下げ隊を馬鹿にする雰囲気があって、新聞社の主張が世論に近いと私も錯覚してしまった。
 読売新聞が早速世論調査を行った。この調査は緊急調査で読売新聞が通常行う面接調査でなく、電話による調査で行われた。この緊急世論調査は、「福田総理が一般財源化を打ち出したことに世論が歓迎して、福田内閣の支持率が反転するのではないか」という読売新聞の期待が込められた緊急調査だったと思う。

 ところが、結果はまたくの期待はずれで内閣支持率は更に低下した。これにはナベツネ涙目であろう。一方の民主党も“公約”のガソリン値下げを実現したが、政党支持率は22.9%で、自民の27.3%には届かなかったとか、今回のような電話方式の調査では、民主支持の数値が高く出る傾向が反映したと悔し紛れの戯言を言うのがせいいっぱいだった。私の経験則では、支持政党なしという層は郵政選挙の時ですら民主党に投票した人が多く、通常は2:1で自民党より民主党に流れるので、自民党民主党より最低12%支持率で上回らないと選挙に勝てないというのが私の経験則であるから、自民党の支持率が民主党のそれを上回ったということなど言及する意味などないのである。
 毎日新聞も他の新聞社と足並みを揃えて、福田総理の一般財源化提案を評価し、民主党は譲歩して暫定税率廃止を取り下げよと主張していたのだが、世論とのギャップに直面して、敗北宣言を出している。暫定税率廃止を愚とするような新聞社の主張に対し、相当の苦情が新聞社に殺到したのだと思われる。

 毎日、朝日、読売、日経、産経各紙の社説はそろって「道路特定財源一般財源化には大賛成、暫定税率撤廃にはこだわるな」の論調。この主張には読者からも「庶民の暮らしの厳しさが分からないのか」といった批判が寄せられた。世論調査でもガソリン値下げを歓迎する人が大半。そんな中、「教育や福祉、環境などまだまだ予算が足りない分野がある」とか、「税率は欧州に比べて低い」とか、「それが脱石油社会の構築につながる」とか言ってもなかなか通じない。それを痛感する日々だ。

 新聞の敗北をどう見るか。正直、毎日机上で政治を語る新聞記者より、選挙区を足で回っている政治家の方が庶民の実感を掴んでいたとも言える。また会社員でありながら他業種に比べ非常に高い給与をもらい、毎日会社が手配したハイヤーで通勤している新聞記者には庶民的な実感が欠落し、まったく空気が読めなかったという分析もできる。