さすがの池田信夫氏も食糧問題に関する主張を変えてきた

さすがの池田信夫氏も食糧問題に関する主張を変えてきた。私はかねてより彼の食糧問題・農業問題に関する主張を批判してきた。2007年9月の「食料自給率という幻想」では日本で農業をやることを不合理とまで言い放っている。

「食料自給率なんてナンセンス」である。リカード以来の国際分業の原理から考えれば、(特殊な高級農産物や生鮮野菜などを除いて)比較優位のない農産物を日本で生産するのは不合理である。そもそも「食料自給率」とか「食料安全保障」などという言葉を使うのも日本政府だけで、WTOでは相手にもされない。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/dc1ed23cfded932bbfe48b6e39058e5e



 池田先生も長らく農業保護を批判し、食糧不足はないとの主張を続けてきたが、やはり現実を鑑みて主張に修正が見られる。
 まずは食料不足という現状を認めた。もちろん食糧問題の現状は全体では投機等の問題が多いのではあるが、現実に食糧不足が起こっている国が存在することは誰も否定できない事実である。
 また日本で農業をやる異議を評価した。以前は日本なんか農業を止めてしまえと言わんばかりの主張であった。
 またかつては、WTO違反だと徹底的に批判していた農家への所得保障を認めた。

減反政策をやめ、在庫米を輸出せよ
町村官房長官減反見直し発言が、大きな反響を呼んでいる。若林農水相が反発する一方、民主党は賛成している。町村氏の発言は私の地元、北海道ではコメができる場所(水田)の半分は使っていない。世界で食糧不足の国があるのにもったいない。減反を見直し、コメを増産することが国際貢献になる。という常識的なものだ。しかし農水省の白須事務次官は、「生産調整を止めて好き勝手に作らせれば、当然コメ価格はどんどん下落する。農家が打撃を受ける」と述べ、自民党の食料戦略本部長を務める加藤紘一氏は「コメは余っている。大豆や小麦を作らないと駄目だ」と述べた。これは日本の農政の社会主義的な発想を示すものだ。どんな作物をどんな価格で売るかは、市場で決めるべきであって、政府が決めることではない。増産で価格が下がるといっても、日本の米価は国際価格の3〜4倍で、国際標準に近づくだけだ。百歩ゆずって(サラリーマンより高い)兼業農家の所得が下がるのが困るというなら、その差額を所得補償すればいい(これは民主党も提案している政策だ)。「所得補償には1兆円以上の財源が必要だ」と農水省はいうが、そのぶん農業補助金を削減すれば財政負担は増えない。もちろん減反をやめればコメは余るから、それを飢餓に苦しんでいる国に輸出すればよいのだ。さらに問題なのは、ワシントンポストにも指摘されたミニマムアクセス(MA)米の備蓄だ。いやいや輸入した低質米は売れず、在庫は150万トンに及ぶ。これは2500万人の1年分の消費量だ。この食糧危機の最中に、それを死蔵したまま家畜の餌やエタノール燃料にするという農水省の計画は、ポスト紙もいうように狂っている。MA米はタダで輸出しても、年間150億円にのぼる保管料が節約できる。日本政府が、数億人が飢餓に瀕している状況より国内農家の所得維持を優先したら、洞爺湖サミットで世界の非難を浴びるだろう。人気最低の福田首相が国民の信頼を取り戻すためにも、農水族の抵抗を押し切って、珍しく良識ある発言をした官房長官を支援し、減反の廃止とMA米の輸出をしてはどうか。田植えはこれからなので、まだ間に合う。緊急に減反をやめるべきだ。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/3143217b6a0fa86759e60baac4aa4f8d



 池田氏の主張の中で、農業に対する規制や補助金を撤廃すべきなど、変わっていない主張もあるが、現実を鑑みて基本なスタンスを変えている。
 学者やインテリは学説の奴隷になりやすい。実体経済や現実問題を直視しないで、偉い先生の学説を信奉し続ける。池田先生もリカードの奴隷になっていたのだが、ようやく開放されたようだ。
 都市部のインテリ層には自由貿易論者が多い。かつて池田氏のブログに多くの賛同の意見が寄せられたが、かつて池田氏喝采していた自由貿易論者は今頃何を考えているのであろうか?