教育後進国ニッポン いますぐ世論を変えなければいけない

教育への公的支出、日本最下位 家計に頼る構図鮮明 - 9/9朝日

私も恥ずかしながら小泉元総理に期待したことがあります。小泉さんの「米百俵」の話には少し心を動かされました。
 ところが小泉政治は言っていることがやっていることが全然違う。教育すらも聖域でないとして予算は削られ、国公立大学の授業料はどんどん上がりました。それも値上げ理由が私立との格差を是正するというのだから、飽きれてしまいました。
 また小泉時代にすっかり有権者も洗脳されてしまい、教育すら受益者負担のサービス産業であるかのような思想が蔓延し、授業料や給食代が払えないことを個人のモラルの問題に決め付け*1、冷徹な取立てを行なう官僚的な教員が拍手喝采されるような極めてイガイガした国民世論が形成されたのであります。民主党参院選マニフェストで高校の授業料無料化を掲げたときは、自民党やマスコミだけでなく、多くのブロガーがバラマキ批判を展開*2、実際に年間11万人の生徒が高校を中退し、その理由の筆頭が経済的問題であることをほとんど問題視していないのです。

 世論が急に変わることがあります。農業政策に関しては、農家に補助金を支給することに対し殆どの都市住民がアレルギーのような拒否反応を示し、中には日本は農業に向かないから食料なんて輸入すればいい、自給率を上げるなんて政策はバカげているという意見もかなり散見されていましたが、中国の独ギョウザ事件ですっかり世論の風向きが変わり、かつて自給率回復政策をバカにしていた人間は今では口をつぐみようになりました。
 日本の多くの国民がアメリカや欧州の国々でさえ、WTOに違反しないような範囲内で国内農業保護政策を実施しているのを知らなかったんですね。それでもって補助金をことさら敵視し、食料自給率が漸減していることに長いこと危機感すら抱かずに来た。アメリカや欧州がちゃっかり食料自給率を堅持する中で、日本だけアホみたいに自由貿易で食料が安くなるのは消費者の利益だみたいなアメリカと日本の商社が儲けるためのプロパガンダに国民が洗脳され麻痺していたのです。
 このニュースのブクマを見る限りでは、教育問題でも潮目を感じるのであります。日本人は外国ではどうだという事例に弱いですね。日本以外の先進国がちゃんと教育にお金をかけているというニュースが流れると、教育は受益者負担で高校は義務教育じゃないからカネのない奴は働けみたいなネオリベ言説を垂れ流していた人も急にビビリ出すのではないでしょうか。先進国では、国を豊かにするには国民所得を上げる、そのためには国民の能力を上げるのが得策というのがセオリーとなっています。能力が低くて低所得の仕事にしか就けない人が生まれて生活保護を垂れ流す前に、学校教育段階で底上げをはかるのです。
 日本も戦前はこういう考えが浸透していたから、近代化に成功し、西欧の植民地にならずに済んだのですが、いつのまにかこの考えが忘れ去られ、教育を受ける機会がないまま低賃金労働にしかあり付けない若者が大量生産されている現状を問題視してこなかったのです。世論が変わる事を期待します。

*1:一部に払えるのに払わない親がいるのは事実だが、本当に払えない親の問題はスルー。貧困問題をモラルの問題にすり換えるのはネオリベラリストの常套手段で、ワーキングプアという言葉が生まれる前は、若者の貧困は意欲の低いニートのせいで、教育によって鍛え直せという暴論がまかり通っていた。

*2:その割に、東京都の低所得家庭への塾代無利子融資には批判が少なかったのですが…