自民党内の抗争がウケなくなった訳

 昨今、自民党の麻生総理周辺と反麻生の抗争が自民党の支持率を更に押し下げたと言われ、そのような世論調査の結果を受けて、反麻生派は身動きがとれなくなり、うわべの一体感を演出しているのが今の自民党だ。
 いままで、自民党内の対立は必ずしもネガティブに受け取られることはなかった。記憶に新しいのが、小泉時代郵政民営化賛成派と反対派の抗争である。結果、郵政民営化推進派が善玉、反対派が悪玉になり、その勧善懲悪猿芝居に全国民が酔いしれ、自民党内の抗争により民主党の存在がどうでもいいものになり、自民党が選挙で圧勝した。
 あの時と今とでは何が違うのであろうか。反麻生陣営は小泉支持派の系譜の議員が多いが、彼らは構造改革路線堅持を旗印に、構造改革路線見直しに舵を切る麻生路線を批判すれば世論の支持はついてくると考えたようだが、大きな誤算であった。もう新自由主義的な構造改革路線に国民の支持などないのである。それに気づいていないで未だに昔の旗を立てて騒いでいるのが反麻生陣営の実態だ。
 さりとて、麻生路線も国民に支持されていない。小泉構造改革路線の評判が悪くなったからと言って、小泉以前の自民党がよかったと思っている人もまた少数である。2000年の森内閣の時には既に自民党はだいぶ愛想を尽かされており、その後小泉純一郎の出現によって一時的に支持を回復したに過ぎないのだから、それ以前の自民党を彷彿させる麻生路線にそもそも支持が集まるわけがないのだ。
 つまり小泉的な「新しい自民党」も麻生的な「古い自民党」とも国民の支持がないので、両者が喧嘩したら更に呆れる人が増えるだけなのだ。内輪で喧嘩して支持が集まるのは、あくまで一方が善玉認定されていることが条件なのだ。もちろん、麻生総理と反麻生陣営が握手したところで何の効果もないだろう。両者とも国民の支持などないのだから。
 多くの国民が求めているのは新自由主義でもなく、古い自民党政治でもない、その次のビジョンだ。民主党はまだ答えを出している訳ではないのだが、とりあえず新自由主義とも古い自民党政治とも違うので支持を集める受け皿になり得ている。自民党内には相変わらずの新自由主義の残党と古い自民党政治に回帰を志向する勢力しか目立っていないので、支持が集まらないのだろう。自民党内にどちらでもない新たな旗を立てる勢力が少しでもいればまだ救いようがあったのだが、どうもこのまま沈没してしまいそうな雲行きだ。