バラマキ批判が好きなみなさまへ

 マスコミは相変わらず、バラマキ批判が好きで、民主党マニフェスト自民党マニフェストもバラマキだからダメだと言っている。
 民主党自民党の政策をバラマキだと言い、自民党民主党の政策をバラマキだと言い、共産党ですら「バラマキ」という言葉を好んで使って、定額給付金を批判していた。
 整理すると、すべてのバラマキは悪であるという原理主義的な新自由主義者の残党や財政タカ派がいて、更に自分たちの再配分策はクレバーだが、他党の再配分策はクレバーでないのでバラマキだと罵り合っている人たちがいる。それらが合い乱れて好んでバラマキ批判をしているから、何が何だかよくわからなくなっている。
 バラマキは悪であるという原理主義的な新自由主義者の残党や財政タカ派はマスコミや学者に少なからず残っており、またなんとなく2000年代前半の政治風潮を引きずっている有権者は今でも「すべてのバラマキは悪である」という感覚を持ち続けているようであるが、実際にそのような考えを持っていても、その政策にマッチする政治勢力がほとんど存在しない。
 すべてのバラマキは悪であると考える原理主義者のみなさんは、仕方ないから財政出動の絶対額が少ない方を選ぼうという選択肢もあるだろうが、せっかくだから「我々のバラマキの方がクレバーだ」と主張している政党のバラマキ方をよくチェックしてみて欲しい。
その前に「バラマキ」というスティグマが何に対して貼られているか、解析しなければならない。これらを目的別に分けると「経済対策」「社会保障」「その他個別目的」に分けられる。それぞれバラマキの経済効果、社会保障政策としての意味、それぞれ個別目的の効果といったように多面的に検証する必要がある。

項目 予算 経済
対策
社会
保障
その他
目的
定額給付金 2兆円
地方交付税 1兆円
雇用対策 1兆円
経済緊急対応予備費 1兆円
雇用対策、住宅・中小企業減税 1.1兆円
省エネ・農林水産業対策・学校耐震など 0.9兆円 災害対策など
高速道路値下げ 0.5兆円
高齢者医療対策 0.4兆円
その他 4.1兆円
12兆円
項目 予算 経済対策 社会保障 その他目的
幼児教育無償化、高等教育低所得者の無償化等 財源明記なし
項目 予算 経済
対策
社会
保障
その他
目的
子ども手当 5.3兆円
医師不足対策 1.6兆円 医師不足
高校無料化 0.5兆
ガソリン税暫定税率廃止 2.5兆円
医療・介護の拡充と後期高齢者
医療制度の廃止
2.9兆円
高速道路の無料化 1.3兆円
農家に対する所得補償 1.0兆円 自給率向上
雇用対策・最低賃金の引き上げ 1.0兆円
その他 0.7兆円
16.8兆円

はたしてどちらがクレバーなのか?
民主党マニフェストの方がいいという意見としては、自民党のバラマキが「官」へのバラマキなのに対して、民主党のバラマキは「民」へのバラマキ。同じバラマキなら「民」への方がいいという意見だ。
麻生政権の経済対策は、表には見えないが、地方交付税やその他の部分は公共事業を多く含んでいる。反バラマキ世論は社会保障へのバラマキより公共事業へのバラマキの批判がより強いので、そのような意見になるのであろう。
ちなみに民主党は財源の多くを「税金のムダの削減」に頼るが、中には公共事業の削減も含まれる。歳出削減のために公共事業削減や公務員人件費引き下げによるマイナス効果を指摘する意見もエコノミストから指摘されている。
http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnTK031825020090729


 自民党のバラマキはマニフェストでは幼児教育無償化、高等教育低所得者の無償化など、民主党への対抗策で載せているが、支出を最小限にするために対象を限定化する考えのようだ。
世耕参議院議員は「バラマキは悪だが、自民党の方がマシ」http://blog.goo.ne.jp/newseko/e/fb6d31e4c1146d1e40f9db1b06074104
と言っているように、すべてのバラマキは悪なので絶対額が少ない方がマシだという考えの人であれば自民党に軍配を上げるであろう。
ただ景気対策定額給付金のような限りなく広くて薄い施策を取りながら、今後はピンスポット的な社会保障的な政策に限定するというのは、今ひとつ首尾一貫していないような気がする。特に公明党などは民主党子ども手当が高額所得者にも支給される点を突いて、バラマキだと批判しているが、低所得者に限定すると社会保障の意味が強くなり、経済対策としての効果は余り期待できなくなる。
そもそも現与党のバラマキがクレバーかどうかは、麻生内閣の経済対策が効果があったのか否かを以って判断すべきであろう。内閣府の発表では4~6月期のGDPが+4.3%と5四半期ぶりにプラスに転じたとしているが。