事業仕分けを評価するのは誰か? 批判する人は誰か?

 財務省の考えは財政タカ派に近い。歳出削減と増税を同時にやらなければ、財政は立ち行かないという考えだ。一方、民主党は基本的に「予算の組み替え」志向で、公共事業などの予算を削減して、その分を社会保障に回そうという考えで、財務省とはベクトルは異なる。ただ「削る部分は削る」という部分は利害が一致しており、その一致した部分を実行したのがこの事業仕分けだと言える。財務省は強かなので、民主党政権は消費税を上げる気がないのでけしからんとは言わずに、まず利害が一致したところは積極的に動こうとする。その辺は民主党政権は消費税を上げないからかしからんと言う財政タカ派の識者や、弱者に甘いから許さんというネオリベの識者のような頭の堅さはない。
 財政仕分けという作業だけ取り上げれば、財政タカ派及び民主党の「コンクリートから人へ」的な予算の組み替え志向の人には一定の支持を得られている他、小泉自民党を支持してきた勢力にも支持者は多い。純粋な新自由主義者は減税&歳出削減を是としているので、事業仕分けには好意的である。民主党にもホンネは新自由主義者という議員も少なくないので、どんな考えで事業仕分けに参加しているのか穿った方がいいかも知れない。
 では批判しているのはどのような勢力か?一つには麻生自民党路線のような、積極財政でかつその担保として消費税アップを支持する勢力が考えられる。本来ならば国民新党もこの勢力であるが、国民の支持が高い状況で閣内不一致のリスクを冒してまでも批判するのは得策ではないと考えているのか、だんまりを決めている。
 批判勢力のもう一つは成長戦略派と呼ばれる人たち。新自由主義者に近いが、純粋な新自由主義者は、政府が経済成長戦略を描くのは社会主義だと考えていないので、若干違う。政府が「日本はこれからこれで成長するぞ」と決めて、そこには積極的に財政を投入するという主張で、積極財政にも遠からずだが、公共事業に変わるべつの使い道を模索するという主張だ。いまいちはっきりしないグループだが、よく聞く意見でもある。民主党政権は弱った部分を手当するためにお金を使う傾向があり、その予算を捻出するために、前政権で重点施策とされた予算*1が削られるのが許せず、「政府は成長戦略を描いていない」と批判している。
また財務省に限らず、財政タカ派が多いマスコミや評論家の多くに、「マニフェストを反故にしてでも財政再建しろ」と声高に叫ぶ声が多く聞かれるようになった。財務省の狙いも、まず歳出削減は民主党に手柄を取らせて徹底的にやって、その後税収の大幅な落ち込みや、思った程歳出削減ができなかったことを理由にマニフェストの一部を凍結・断念させようという狙いは当然に持っているだろう。民主党政権社会保障の充実を期待した左派などは、事業仕分けをある程度評価しつつも、社会保障施策の充実が後回しにされかねないことを見通して財務省主導を批判している。
※普段は財政再建至上主義な発言をしているのに、なぜか財務省主導だと批判しているよくわからない評論家や、民主党政権がやることはとりあえずケチをつけましょう*2というレベルの意見も多いがその辺は相手をしても仕方ないので割愛する。

*1:予算獲得のお墨付きを得るために、あれだこれだと未来形のお題目が並べられたものが多い

*2:以前は自民党政権のやることはとりあえずケチつけましょうという人も多かったが…