鳩山政権は消費者に高いものを買わせて結果的に国庫の歳出を削減する自民党型システムを再評価してはどうか。

 農家戸別補償について個人的には反対ではないのだが、財源が厳しくて優先順位を下げられてしまうのであれば、緊急避難的に自民党的な「農作物を高く維持する保護政策」を再評価してはどうか。自民党の農業農政は戸別には補償しないけど、農産物の価格をコメなどの穀物を中心に高く維持して農家の所得を担保しようという政策であった。消費者が受益者負担として高い農産物を買って農家を支える仕組みで、これはこれで批判も多く、マスコミも民主党も批判してきた。
 確かに農作物の価格を下げることは、エンゲル係数の高い低所得者により大きなメリットをもたらすので優しい政策かも知れない。また高価格維持のためには反自由貿易の立場を取らざるを得ない点、反自由主義的であり、経済学者からの批判が多く、民主党の「自由貿易を認めながら戸別補償を行う」という政策の方が国際的には通りがいいのは確かだ。ただ自民党的政策は国庫が痛まないし、消費者も高い農作物を買わされることに慣らされてしまっていて反発があまりない。それならば高い農産物を消費者が買い支えるという政策を続行してしまってはどうか。
 似たようなケースに交通政策がある。日本の高速道路料金は世界的に見ても非常に高いが、高速料金が他の交通機関の料金を下支えしてきた面もある。高速料金が高いので、鉄道や高速バスも高めの料金を維持でき、鉄道が高いので国内航空路線も高い料金が維持できた。航空会社も鉄道会社もバス会社も内部扶助で都市間の幹線の利益でローカル輸送を維持することを求められ、結果的に赤字の公共交通機関への補助金を増やさずに済んだ側面がある。
 高速道路が仮に無料化されると、国内の交通機関に価格破壊が起き、内部補助の余裕がなくなるため、ローカル輸送を維持するための公的支出が増大する。単に高速道路料金を無料にするだけであれば、ガソリン税が余り気味なので実現可能かも知れないが、内部補助システム崩壊による公的負担の増大まで民主党は計算していなかっただろう。
 確かに日本の公共交通機関の料金は割高だが、消費者はこの価格に慣れてしまっており、下げて欲しいというニーズは高くない。それならこのまま高価格&内部補助システムを維持した方が国庫も痛まなくて済むのでいいのではないか。山崎養世とかいう得体の知れない経済評論家の言うことを聞くのもそろそろ止めにした方がいい。
 政府がいろいろ規制をして価格を釣り上げて、それによって結果的に税金による補助金を削減させるというのが自民党的な政策の特徴だ。自民党時代も、このような政策は自由主義的でないと批判されて縮小されてきたが、財源不足も相まって、小泉時代も見直されずに残ってきた。必ずしもいい政策とは言えないが、限られた財源で目的を実現するには、「消費者に高コストを負担させることで税金投入を減らす」という政策を思い切って併用すべきではないか。日本の消費者はおとなしいので、文句は言わないはずだ。