経済成長の基礎は需要側にあるか供給側にあるか

成長戦略策定会議での菅直人竹中平蔵の、経済成長の基礎は需要側にあるか供給側にあるかという議論はなかなか興味深い議論であった。ちょっと抽象的かつ単純化され過ぎて中身の掘り下げは不十分であるが、いろいろな勢力が整理されないまま混在する自民党民主党の二大政党選挙や、あいかわらず55年体制を引きずったネットでもウヨサヨ議論に飽き飽きしていたので、なかなか新鮮である。
 菅直人竹中平蔵ともそれぞれ思惑があったと思う。菅直人の思惑は、民主党の政策も成長戦略であるということを認識させたかったのだろう。子ども手当や高校の無償化といった施策は社会福祉と認識さることが多く、経済成長施策との印象が薄い。社会福祉政策は、社会の怠慢を招くと自由主義者には経済成長の阻害要因とさえ言われるケースも多いので、印象を変える狙いがあったと思われる。
 竹中平蔵は、福田政権意向は自民党民主党小泉路線から離反し、竹中が是とする経済政策自体が政治の選択肢から消滅し、忘れ去られようとしている。なんとかここで存在をアピールしたいとの狙いがあったと思われる。
 あえてわかりやすい議論をわかりにくくするが、需要側の政策もターゲットを誰にするかで3つくらいの政策に分類される。彼に低所得者特化をA、無差別をB、高額所得者中心をCとしよう。供給側の政策も減税や規制緩和で企業の投資を促す新自由主義的な政策と、公共事業によって需給ギャップを埋めるケインズ的な政策がある。前者を供給側A、後者を供給側Bとしよう。
 

 さらに低所得者により手厚い支援をするために、給付金に所得制限を付ける。あまり限定し過ぎると需要政策としての効果が乏しくなり、福祉政策になる。伝統的に左派がこの政策を支持するが、給付金の総額を抑制したい財政再建主義者もBよりAがよいと主張する。

  • 需要側B…無差別、給付金

 低所得者より中所得者。もう少しでマイホームに手が届く程度の所得層に手厚くするのがもっとも景気刺激効果があると言われている。AやCだと中所得者への効果がないので無差別に給付するという考え。

  • 需要側C…高所得者中心、減税、累進税率の緩和

 高所得者への減税効果をより大きくする。高額商品が売れ、それを販売する人、サービスを提供する人の所得も増えるというストロー理論

今回の論争は需要側Bの菅直人と、供給側Aの竹中平蔵の論争である。実際には需要Bを主張している自民党国民新党子ども手当や高校の授業料に所得制限を設けて、本当に困っている人だけ出すけるべきだと主張する人。或いは景気対策など何をやっても無駄なので、税制再建に注力せよという財政再建紫綬主義者などが混在して非常にわかりにくくなっている。
どちらかと言うと、今は需要Bのような経済政策を求める声とどうでもいいから財政再建に注力せよという意見が争っているような印象が強い。菅直人竹中平蔵はもちろん水と油な主張なのだが、あえてその二つの主張を退場させて二者択一的な論争をすることで、経済成長政策としてはマイナーなお互いの存在をアピールする利害の一致があったのではないか。
個人的には、企業が設備過剰な時に供給サイドの施策は効果ないと思っている。需要サイドの政策で効果があるという学説や実例が多い訳ではないが、供給サイドの施策が期待できないのであれば、需要サイドの政策を試せばいいと思う。その中で一番効果のありそうなのがBの施策のようなのでそれを試してみればいいと思う。
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*1:もちろん、今回の議論で外されたケインズ的な政策(供給B)を支持する声も強い。12/10のエントリー子ども手当ては貯金する人が多いという調査結果を紹介したが、供給Bを主張する人は、需要Bの政策が効果ないということをアピールするために「給付金は貯蓄に回る。」と主張するのである