民主党政権の背後にちらつくナベツネの影

 マスコミというのは得てして政権に対して往復ピンタをやるものだ。支持者が「マスコミに虐められた」と被害者意識を持っている麻生政権などの例だと、厚生労働省の分割の話が出た際に一度マスコミは批判し、撤回したらまたブレたと批判するのである。マスコミは政策を批判し、その政策が撤回されればそれを歓迎するのではなくブレを批判するという往復ピンタをやるのが常である。
 今回の暫定税率維持の件でも、朝日、毎日、産経などはマニフェストマニフェスト至上主義に陥るなとして、高速道路の無料化と並んで、暫定委税率の維持を主張してきた。しかし撤回されるとお約束通りブレたという往復ピンタの批判をしている。
 ところが読売新聞は論調がちょっと違う。新聞社が全体的に財政規律重視の毛色が強い中でも特に財政再建至上主義の論調で、民主党政権にはマニフェストを反古にしてでも暫定税率は維持しろと主張してきた。今回の社説では政策が現実的になったとの評価をし、政策決定プロセスの不透明さや総理のブレを批判する社論を張る他紙とは一線を画している。
 同じ日の社説で読売新聞は習近平国家副主席の訪日問題を取り上げ「首相官邸天皇陛下との会見を特例として実現したり、首相主催の夕食会を開いたりして国家元首級の扱いをしたのも、習氏の立場を重視したためだろう。」と理解を示した上で「天皇陛下と習氏との会見を巡る日中両国政府の不手際によって、日本国民の対中感情にしこりを残す形になり、今後の日中関係の展望を切り開く契機にならなかったことは残念だ。」という微妙なコメントに終始し、朝日新聞ですら声を張り上げている「天皇の政治利用批判」や産経新聞のように政権批判の利用しようと言う魂胆はほとんど見られない。
 習近平国家副主席の天皇陛下との会見について、単に小沢幹事長の意向だけでなく中曽根元総理の口添えがあったと言う情報も、ますますナベツネの存在を覗わせるものである。
 どうも最近の民主党政権の方針転換のベクトルが読売新聞の社論と符合するきとが多いことが気になっている。小沢一郎ナベツネツーカーな仲なのは周知の通りで、ナベツネは小沢を通じて政治への積極的関与を再開したのではないかと穿っている。
 ナベツネはさすがに今でも民主党政権が潰れるように頑張っている産経とは異なり、自民党に政権奪取の力がないのを早々に悟って、今の政権を動かすことに早々と舵を切ったとも考えられる。この様子だと高速道路無料化の中止が早い段階に宣言され、消費税アップの議論も早まると考えられる。ただ在日米軍基地問題だけは小沢一郎は読売の社論から大きく外れる行動をしている。この辺も注意深く見たほうがいいだろう。