子ども手当ての所得制限についてマスコミはきちんとデータを提示した上で調査をしているのか?

世論調査では「所得制限すべき」との声が大きいようだが、きちんと客観的データに基づいた判断がなされた調査なのか甚だ疑問であり、適当な印象論で世論誘導のために世論調査を行ったのではとの疑念を拭えない。


ます議論をする上での基礎データ

  • 子ども手当てに必要な財源は2兆2554億円。
  • 年収2000万円以上の人を制限した場合に浮く財源は20億円(約▲0.9%)
  • 年収860万円以上の人を制限した場合に浮く財源は2000億円(約▲8.9%)

これを見た上で判断すべき。

その上で、私は所得制限は無意味だと言いたい。金持ちに金をくれてやるのは面白くないというのは感情論としてはわかるが実際はクレバーではない。

  • 所得制限によって捻出できる金額はそう多くはない。

 年収2000万円以上の制限だと、捻出できる財源は極端に少なく、事務経費の方が圧倒的に多くなる。年収860万円にしたところで、実はそれほどカットできない。

  • 中所得者への子ども手当てを減額すると、景気刺激効果は格段に下がる。

 高額所得者は貯蓄又は投資性向が高いので、子ども手当の消費刺激効果に乏しいのは確か。その意味では年収2000万円以上の人に支給しないのは理に適っているが、年収1000万円前後というのは消費性向が高く、このゾーンを外すのは景気刺激効果を著しく減退させる。
 子ども手当社会保障少子化対策景気対策の3つの狙いがあり、やる以上はどの目的も軽視すべきではない。

  • たとえ所得制限をしなくても、今までの国民還元型の政策に比べればはるかに弱者に優しい。

 自民党政権時代も消費を刺激する施策は何度か打たれたが、定率減税累進課税の緩和と言った高額所得者有利の施策が多かった。定額給付金低所得者にも恩恵のある施策であったが、1回限りであった。
 ちなみに最高税率は1986年まで70%であったが、1999年までの間に度々引き下げられている。

  • 所得制限した場合の議論が煮詰まっていない。

 例えば年収1000万円あっても子どもが4人もいたらそう家計はラクでない。年収700万円の家庭の一人っ子は子ども手当てがもらえて、年収1000万円あると子どもが4人いても一切手当てをもらえないのか?
 或いは年収850万円の人はもらえて、860万円になるともらえなくなると、企業の賃下げを助長したり、昇進を拒否する人が出てくるなど社会的マイナスは生じるのでは?
 等等、細かい議論があとから噴出するに決まっている。そういった批判に応える準備ができていないと思われる。

 今、マスコミは所得制限なしで給付することに対する批判に絞って取り上げているが、もし所得制限をしたらしたで一斉に批判は起きる。そもそも子ども手当そのものを批判したい人は相当数いる訳で、その人たちはとにかく子ども手当という施策のイメージを下げたいのであるから、今は所得制限なしで支給することをネタにして批判しているけれど、所得制限をしたらしたでそれをネタに子ども手当を批判するはずだ。これは民主党だって自民党政治を批判する時に散々使っていた攻撃テクニックである。批判されるなら1回で済む初志貫徹が一番である。これくれいは野党時代に学んで欲しかったものだ。