高速道路無料化に反対していたはずの知事が、無料化を要望する怪

 事業仕訳の結果、高速道路無料化のための予算は大幅に削減されたが、マニフェストが取り下げられた訳ではなく、一部社会実験を行う計画のようだ。当初は四国や北海道などで社会時実験を行うという噂があったが、最近では、地元の要望が強い地域で社会実験を行うという言い方を前原国交相はしている。
 ほとのどの知事が高速道路の無料化に反対していた中、高速道路の無料化実験は頓挫するのかと思われたが、ここに来て当初反対していた広島県島根県の知事が無料化の要望を行っている。広島県は1月に知事が交代したので方針転換もわかるが、自民党が大敗した先の総選挙でも自民党が優位に勝利した島根県の知事が方針転換したのは驚きである。

 

 確かに島根県が高速道路無償化を要望するのは利がある。島根県の邑南町や浜田市南部だと広島まで車で1時間くらいで行ける。まともに高速料金を払って通勤したら5万円くらいかかり通勤は困難だが、もし無料になれば邑南町や浜田市南部は頑張れば広島に通勤できる地域になり、地元に残る人も増えるかも知れない。また島根県西部は広島までの鉄道もなければ、大した商業施設もないので、公共交通の衰退やストロー効果による地元商業へのダメージが小さく、定住促進や観光客誘致などのプラス面の方が大きく期待できる。
 高速道路を高いまま残す地域は、その分道路建設予算を多くつけますよという話にはならないだろう。このままでは先に高速道路無償化を要望した地方が得をし、知事が反対している地方は、その地方の住民だけ高い高速道路料金を払うばかりか、高速道路が高いという理由で観光客誘致で不利な状況に置かれることになりかねない。
 置くの知事が高速道路無料化に反対していたのは、別に環境問題云々や公共交通機関の衰退を心配してではなく、あくまでも道路建設を重要視し、高速道路無料化のために今まで道路建設に使われていた財源を持っていかれたくないからである。もう道路建設抑制が既定路線となり、道路建設の推進が難しい以上、高速道路無料化に反対し続けるメリットはない。むしろ貧乏籤を引きたくないと転向する知事が今後も増える可能性がある。