中途半端な鳩山政権の弱さと強さ

中途半端な鳩山政治の弱さ

 とにかく中途半端で灰色な決着を好む。それが鳩山総理にしてみれば友愛なのかも知れないが、このような政治判断は黒い決着を求める人からも白い決着を求める人からも批判を受ける。
 自公政権末期の政権も何をやりたいのかわからない政権が続いたが、ある意味鳩山政権も中途半端で、総選挙では小泉時代新自由主義的な政策に対する批判票と、麻生政権時代の古い自民党への回帰に対する批判票を両取りしてしまったために、性格が曖昧になった。新聞や経済誌を読む限り、民主党政権社会主義的な性格が批判されているように感じてしまうが、逆に民主党政権小泉時代の改革路線の似ているという批判も少なくない。結局、中途半端なので、新自由主義を支持していた人からも、新自由主義を批判していた人からも批判されている。
 ネットばかり見ていると、民主党政権サヨク売国というステレオタイプな情報ばかり飛び交っているが、実際はそうでもない。高校の授業料の無償化問題での朝鮮学校へ対応などで、鳩山政権の保守性への批判も少なくない。特にサヨクの強いはてな界ではそういう意見もよく見る。結局、中途半端な鳩山政権は右派からも左派からも批判される。
 公務員制度への対応もよくわからない。民主党大衆迎合的な公務員バッシングをやめろという意見と、結局官僚依存で公務員に甘いという批判が錯綜している。結局どっちサイドの人からも評価されていない。
 鳩山政権の中では比較的支持が高い事業仕訳にしても、中途半端で大して無駄が捻出できなかったではないかという批判と、歳出削減路線や人民裁判的な手法への批判が交錯している。
 マニフェストに対する批判も強いが、そもそも民主党マニフェストはよくないので見直せという批判と、マニフェストを反故にしたことへの批判が混在している。どんなに酷いマニフェストであっても、そのマニフェストを支持した人のために初志貫徹すれば、とりあえず一部の人から強烈な批判を受けても、一部の人には支持されたはずだ。中途半端に高速無料化やガソリン税などの政策だけ反故にして、子ども手当は半額支給という中途半端な対応にし、高校無償化は貫徹した。これではほぼすべての人が不満足で批判される。
 鳩山総理の足して二で割るような中途半端な政策決定はほぼすべての人に不満を与える。これでは支持率が下がって当然だ。小泉総理のように一部の人からは強烈に批判はされるが、一部の人には強い支持を受けるような政治家の方が大衆は喜ぶ。今でも大阪の橋下知事はそういうやり方だから人気がある。鳩山総理は一部の人から徹底的に嫌われることを恐れるあまり、不特定多数の人に万遍なく嫌われてしまった八方美人の典型である。

中途半端な鳩山政治の強さ

 ただ、鳩山総理のようなやり方は批判を多く受けるが、批判勢力を両サイドに作るので、選挙で負けにくい特徴がある。つまり批判勢力が新自由主義的な勢力と反新自由主義、或いは右派と左派、官僚を活用せよという勢力と官僚主義批判勢力、マニフェストを見直せという勢力と貫徹しろという勢力、事業仕訳を徹底しろという勢力と事業仕訳を批判する勢力といったように両極に分散されるために、勢力が分散してしまう。
 鳩山政権を支持しない人が統計的には多くても、支持していない人の中に水と油が混在しているので、批判票の受け皿作りが非常に難しい。
 今、世論調査で「みんなの党」が数字を伸ばしているが、新自由主義に批判的な人はいくら鳩山民主党にお灸を据えようと思っていても、なかなか積極的に投票する気にはならないだろう。そして新自由主義的な政策は都市部で一定の支持は得られるが、全国的に支持を得るのは難しいだろう。
 自民党も、鳩山政権への批判票のうちどの切り口を重視するのか非常に悩ましい。
 つまり候補者1人を選ぶような小選挙区制度だと、民主党候補を負かすのは意外と難しいということを意味する。これが中選挙区制度だと、鳩山民主党は大敗する可能性が高い。
 今度の参院選では、民主党比例区で伸び悩み、都市部の3〜5人区でみんなの党議席を許し1議席しか取れない可能性があるが、2人区の1議席は確実で、1人区で自民党が伸びずにそこそこ取るために勝ちはしないがあまり負けないという結果になるような気がする。
 同じ内閣支持率の低さでも、安倍政権のように右に寄って左側に大きな空地を作って支持率が低いのと、鳩山政権のように中途半端だが真ん中に陣取って回りに万遍なく空地を作るのでは脆弱性が若干異なると考えた方がいい。