菅内閣発足。もう消費税アップは既定路線になってしまった。

とにかくマスコミや評論家は消費税を上げる政権は応援する。

 菅内閣の支持率の高さは、報道の仕方にかなり影響されている。閣僚、党幹部を軒並み財政健全派で固めたこの内閣に期待するのは、マスコミや評論家としては当然で、とりあえずは好意的な報道が多くなる。
 本来、「何のために消費税を上げるか」という中身の議論と、「なぜ消費税を上げるのか」という議論が重要なのだが、エスタブリッシュメントにとってそれは時間の無駄で、すでに結論が出ている問題として、議論するのは時間の無駄だと考えられている。

民主党が消費税を上げると言えば、本当に上ってしまう可能性が高い。

 政治的な勘が働く人であれば、民主党に消費税アップをやらせるのは賢い選択だと考える。もし自民党政権時代に消費税アップの議論をしていれば、当時野党だった民主党は政権奪取を優先し、本音は税制健全化を重視する議員も含めて選挙に勝つために消費税アップに反対する可能性が高かった。民主党に消費税アップをやらせれば、自民党も今さら反対もできないだろうという計算が働く。自民党には元々のお客さんであるエスタブリッシュメント層の批判をひどく気にする政党だからだ。
 このまま行けば、次の総選挙は消費税アップの信を問う選挙になる可能性が高い。ただこの選挙はもはや儀式である。民主党自民党も消費税アップを掲げると、それに反対する有権者が意思を示すチャンスは限定的になる。もはや消費税アップを掲げた政党は選挙で負けるというジンクスはノーサイドだ。これは意匠返しエスタブリッシュメントの望むシナリオだ。
 消費税アップに反対する有権者の選択肢は、第三極の中で最も消費税アップに消極的なみんなの党か、与党の中で消費税アップに消極的な国民新党、それと社民党共産党になる。この中で小選挙区にも候補者を立てるのはみんなの党共産党に限られるだろう。この二つの選択肢も死票にならないで生きる可能性は少ない。
 死票にならない可能性があるのは共産党よりみんなの党の方かも知れない。ただ消費税アップに反対するのは伝統的に左派が多く、これらの人がみんなの党に入れるかは疑問である。それに今はマスコミもみんなの党に好意的な報道をしているが、消費税アップ反対を全面に出すと、マスコミに掌を返されるリスクがある。

消費税アップが既定路線になって、選挙の争点は「使い道の論争」になる。

 民主党も消費税アップを掲げても選挙に負けないお膳立てができたとしても、消費税を上げる場合にはそれなりの理論武装をしてくるだろう。恐らくリベラル色を全面に出し、福祉国家的なビジョンと消費税を抱き合わせたり、複数税率を導入を匂わせて逆進性批判をかわすかも知れない。
 ただエスタブリッシュメントは消費税アップと歳出削減を同時進行させる急進的な財政再建を望んでいる。菅総理の理論は消費税の税収で歳出増すから、消費税を上げても景気は後退しないという理屈だが、歳出増の部分を嫌ってそれまで好意的だったマスコミがだんだん批判的になる可能性がある。ここで自民党みんなの党以外の第三極政党がどう出るかが選挙のポイントだ。
 消費税アップまでは利害が共通していても、法人税減税に充てるべきという勢力、公共事業を復活すべしという勢力が様々おり、最終的には使い道で各党が色を出して差別化をはかるだろう。