除染は無駄だという意見

放射能の除染は無駄だという意見は、政治家やマスコミからはほとんど出てこないが、意外とネットでは侮れない意見で、マスコミにより抹殺された世論として注視したい。
 除染は無駄だという意見は主に3種類の潮流がある。1つは「除染の効果は小さく、福島の子どもたちの健康を守るためには避難させるべき」という主張で、福島の市民グループやそれに賛同している県外の運動家やネチズンの間に広がっている。もう2つ目が「放射量は健康に影響なく、除染は不要」という意見。一部の原発推進派の意見に散見されるもので、池田信夫氏がこの意見をしきりに表明している。3つ目は福島県(またはその一部)民の強制移住無人化と言う意見、かなり極論染みているので有識者の意見では見かけないが、twittersでよく見る意見である。放射能のリスクを認めている点では1つ目の意見に近いが、子どもたちの健康より税金の無駄遣いを指摘している点では2つ目にも近い。
 1つ目の立場の人は強固な反原発派、2つ目の立場の人は原発推進派。言っていることは同じでもまさに水と油で、両極端に思われる両者は、このまま両端で交わらないままいるのであろうか?
もしかしたらどこかで交差する可能性はないのか。3つ目の意見を見ると、どこかで交わってゆくという気がしないでもない。
 80年代以降の都市型リベラルの既視感。「環境を守ろう」と言う左派と、税金の無駄遣いを止めろという自由主義者の利害が一致。公共事業によって国土を破壊し続けていた「古い自民党」やゼネコン等の旧産業を共通の敵となり、元々社会党などを支持していた都市部のリベラル層の票が日本新党新生党等の自由主義的な政党に流れた。
 池田信夫は除染にお金をかけるのは無駄と言っているだけで、福島第1発電所の周りに住めとは言っていない。合理主義者なので、除染にかかる費用より避難希望者に補償を出したほうが安上がりならば、原発被災地の無人化強制避難を是とする可能性もある。そうなると3つ目の意見と一致する。3つ目の意見と2つ目の意見は、福島県への愛情があるかないかの差だけで矛盾なく両立する。
 今の民主党政権は80年度のリベラルと自由主義の利害一致の延長上に存在する政権と言ってもいいが、その政権も今はこれ以上避難を拡大させず、除染で対応すると言っている。これについては、除染が遅いという批判はあっても、方向感に置いては自民党から共産党まで幅があまりなく、「除染より避難」という意見は福島県内の数名の地方議員と、それを支持する他都道府県の地方議員だけで、政治的な支持の拡がりはない。
 しかし、それは表面上の動きだけの話だ。