紙屋悦子の青春

 日曜日と映画の日が重なる日は滅多にないので、ここぞとばかりに映画を観に行く。観ようと思っていて、混雑しているという話を聞いて見送っていた映画がこれだ。戦争関係の邦画はほとんど観ているし、原田知世が出演している映画もほとんど観ている私が、この映画を見逃すわけにはいかない。
 映画は前評判通り秀逸なものであった。とにかく無駄なものがない。無駄な登場人物、無駄な背景、無駄な感情表現がない。このシンプルさは何と心地いいものであろうか。またこの映画はユーモアにあふれている。それもすごいシンプルなユーモアが。現在の張りぼてだらけで押し付けがましい「お笑い」でない。
 私は結構邦画を多く見るのだが、どうも西洋人のオーバーな感情表現がNGなのである。日本人は感情表現が苦手だとか、感情の起伏に乏しいと言われるが、私はそういう日本人の国民性が結構好きだ。そのくせ、映画になるとムリな演技をさせて、邦画でもNGに感じることが多い。
 この映画では感情表現は抑えられているが、それがかえって登場人物の気持ちを掻き立てさせてくれる。演出もさることながら、演技力に敬服する。