一般財源派は暫定税率廃止派と共闘せよ

 今一番やらなければならないのは、再び無駄な道路建設が興隆することである。道路予算は小泉政権移行シーリングが抑えられ、必然的に道路特定財源に余剰が生まれたが、一般財源化を断行するリスクを避け、それを本州四国連絡橋公団の長期債務返済に充当したり、開かずの踏切の解消や、ETC車載器リース制度などの関連分野に使用して、一般財源化の布石としていた。そして本四公団の長期債務返済が完了し、租税特別措置法の期限が切れる20年4月を一般財源論者はターニングポイントと考えていた。小泉元総理は結局、道路特別財源には手を着けず退陣したが、改革論者はこれを安倍政権への置き土産と考え、公務員改革と並び安倍政権での構造改革の柱と期待したのである。
 ところが安倍総理は増額の3%を一般財源化しただけ、当初余剰になると言われた7000億円の1/4しか一般化できずに退陣。福田政権に至っては、小泉時代に毎年3%づつカットしていた道路予算まで復活させ、すっかり道路族と国土交通省の天下である。
一般財源派はさぞ怒り心頭かと思いきやそうでもない。福田政権や道路族の批判はそこそこに、一般財源化と暫定税率廃止の折衷案を出してきた民主党叩きに没頭しているのである。道路族にしてみれば御誂え向けの構図になった。一般財源論者は基本的に財政再建論者が多く、暫定税率分も含めて一般財源化することに強い拘りがある。暫定税率の廃止を「ポピュリズム」と怒りの声を上げているのである。
だが、暫定処置を本来の姿に戻すのは普通なのであって、むしろこれまで暫定税率の継続の必要性をきちんと説明してこなかった政府が批判されるべきであり、ポピュリズムというのはお門違いである。猪瀬直樹は折しも一昨年のコラムも「この問題で郵政改革のように国民的支持を背景に政治的決断をするのは難しい」と述べているが、一般財源論者は原理主義的で、政治家も「国民に嫌われる政策を遂行できる政治家が一流政治家だ」みたいなストイック保守主義に自己陶酔しやすい人が多い。
 私は、一般財源論者は暫定税率廃止派と共闘し、国土交通省の道路整備中期計画を支持して道路建設を促進させる勢力と戦うべきであると思う。一般財源化は正直、政治意識の高い人か都市住民にしか響かないし、これに拘り過ぎると地方の住民は道路建設側に取り込まれてしまい、都市対地方の構図になる。一般財源論者は暫定税率の趣旨を理解し、いくらかは税率を引き下げることに妥協し、この問題で国民全体の意識を喚起すべきだ。ガソリン価格に敏感な地方の住民を道路建設促進派から引き剥がすには「暫定税率引き下げ」を認めるしかない。
 民主党案は環境派の私から見ても不満だし、財源の面から少し極端なのは確かだ。ただ世論喚起に成功したのはマスコミより民主党の成果であったのも事実で、最初に25円という金額で世論を喚起するのは作戦論的にはアリなのだろう。最初から10円などと言ったら世論は盛り上がらない。ただ、いくら税率を下げて、いくら一般財源化するという話は、まず道路建設促進派をぶっ潰してからゆっくり考えればいい。民主党案の25円税率を下げて、25円一般財源化する案はしょせん叩き台程度に考えた方がいい。落しどころは最大でも15円で、まあ10円程度の税率引き下げ辺りではないか?